2008年8月9日(土)

五輪開幕式での日韓と北朝鮮の差


 昨晩は北京五輪開幕式に釘付けになった。初めから最後まで見たのは2000年のシドニー五輪以来だ。

 入場行進を見ていて、気づいたことが幾つかある。自国の国旗と一緒に中国国旗を手にして登場したのは日本だけだったような気がする。いつだったか、日本の女子サッカーチームが上海での試合後、「謝謝(シェシェ)中国」の横断幕を広げて、感謝の意を表したことがあった。これが中国人に受けたことで、今回同じ効果を狙ったのかもしれないが、外交、社交マナーの上で良かった。隣国の五輪への隣人としての「連帯」がこめられている感じがして見ていて気持ちが良かった。

 しかし、裏を返せば、それほど気遣わなければならないほど、中国人の対日感情は、日本人が感じているほど良くはないということなのかもしれない。そのことは、すでに予選が始まった男女のサッカーの試合での観客の声援ぶりをみれば、わかる。女子はニュージランドと、男子は米国と対戦したが、中国の観客は圧倒的にニュージランドと米国のチームを応援していた。これは、実に寂しいことだ。

 日本の選手団が場内に入ってきたとき、喚声が少しだけ起きたが、中国人に愛されている福原愛選手が旗手だったせいであろう。言わば、日本の選手団ではなく、福原選手個人への「声援」だったということだ。

 最後のほうになって、韓国と北朝鮮の選手団がそれぞれ入場してきたが、別々の入場行進は見たくもなかった。シドニーとアテネでは一緒に入場したことで大歓声を浴びたのに、残念だ。

 今回、北朝鮮よりも倍の選手団を派遣してきたにもかかわらず韓国選手団の入場には観客は沸かなかった。逆に、北朝鮮選手団が登場したときは大きな歓声が上がったのには少々驚いた。

 昨今北朝鮮の核問題や、脱北者等の問題で「中国人は北朝鮮を嫌っている」とか、援助を請う貧乏な北朝鮮を「お荷物にみている」とか、北朝鮮よりも、「韓国を重視している」とか、いろいろと報道されていただけに、正直ギャップを感じざるを得なかった。中国人が経済大国の日本や対中経済進出が著しい韓国よりも北朝鮮に親しみを感じていることがよくわかった。これが中朝両国の言う「伝統的な関係」の差なのだろう。金で人心はかえないということかもしれない。

 開幕式に出席する金永南最高人民会議常任委員長が胡錦涛主席主催の人民大会堂での宴席で「李大統領と同じテーブルに座ることを嫌ったため南北首脳のニアミスの可能性はなくなった」と書いたが、実際には同じテーブルに座ったことが確認された。また、両首脳が、着席する前に、握手を交わしていたことも、韓国大統領府の発表でわかった。李大統領が金委員長とにこやかに笑いながら握手している写真(上記写真)まで青瓦台から公開された。李大統領は満面笑みを浮かべていた。これまで相手にされなかっただけによほど嬉しかったのだろう。これに気を良くして、8月15日の解放記念日(光復節)の演説では南北対話再開に向けて新たな提案をする可能性もないとは言えない。

 同席を拒むとは外交マナーに反していると思っていたが、金永南委員長が大人の対応をしたのにはホッとした。それでも、ブッシュ大統領も、プーチン首相も李大統領も、他の各国の首脳は皆、自国の選手団が入場した際には起立してエールを送っていたのに、金委員長だけは、北朝鮮選手団が入場した際には立ち上がらず、扇子をパタパタしていたのは、いただけない。