2008年8月24日(日)

星野ジャパンはなぜ惨敗したか


 金メダルを目指した韓国との準決勝では岩瀬が打たれ、銅メダルをかけた米国との3位決定戦では川上が打たれ、日本は惨敗した。

 星野監督が「申し訳ない。すべては私の責任」とコメントしていた。潔くもなんともない。本人が認めるまでもなく、責任は監督にある。そして敗因の一旦は星野監督の言動にある。
 第一に、「金メダルしかいらない」との発言が問題だ。思っていても、口に出して言うべき言葉ではない。苦労と努力の末メダルを勝ち取った銅メダリストや銀メダリストに対して失礼だ。他の色のメダルを軽んじるのは審判の判定に抗議して、銅メダルなんぞいらないとばかり、メダルを放り投げ、授賞式をボイコットしたどこかの国のレスリングの選手の傲慢さと変わりがない。

 次に、国際野球連盟(IBAF)が急遽今回の北京五輪から延長11回以降は無死一、二塁から攻撃を始めるタイブレーク方式を採用すると発表した際、「決まったから、はいそうですか、とはいかない。過程でやってはいけないことがあれば言うべきだ。日本がなめられてはいけない」と抗議したことだ。

 北京五輪に出場した8チームの監督で、IBAFに声高に文句を言ったのは、星野監督だけだった。他の監督はIBAFが決めたことにクレームを付けることはなかった。抗議は日本野球連盟に任せるべきで、現場が口を挟んだり、しゃしゃり出ることではない。監督は黙って決まったルールに従って指揮を取ればよい。

 第三に、横柄であったことだ。韓国との準決勝の前に韓国の記者から「韓国で警戒する選手は?」と聞かれた際に、「韓国チームに警戒する選手はいない。偽装オーダーさえしなければよい」と、韓国を小ばかにするような発言をしていた。

 昨年12月のアジア地域予選の日韓戦で先発オーダーを交換した後に韓国がオーダーを組み替えたことを指しての発言だが、この件についてはすでに韓国が謝罪し、日本も受け入れ、もう終わった問題だ。

 星野監督はそれを蒸し返した。予選で逆転負けしたことへの悔しさがそうさせたのか、対戦相手への礼を失している。韓国には警戒する選手が一人もいないはずなのに、若干20歳のピッチャーに二度もしてやられたわけだから、哀れ極まりない。星野監督がいかに冷静さを失っていたかがわかる。対抗意識むき出しのテンションの高いスタイルは、アマチュアイズムの五輪の世界では浮いていたことを本人は最後まで気がつかなかったのかもしれない。

 まるで巨人戦で抗議するかのごとく血相を変えて主審に詰め寄る場面に見られるように星野監督の気負いと、そして何よりも「俺でなければ金メダルを取れない」と、現役時代一流選手であっても超一流選手でもないのにスーパースターの長島監督の「後継者」を気取った「大いなる勘違い」が、今回の惨敗の最大の敗因であると言ってよい。

 中日の監督時代に2度、阪神の時に1度、合わせて3度短期決戦の日本シリーズで勝てなかった勝負弱さを今回もはからずも露呈してしまったが、韓国の監督から「日本はわれわれとの試合となると随分気負っていたようだ」と同情されていたように星野監督の気負いが選手全体に蔓延してしまったことが敗因のように思われてならない。一見プレッシャーに強そうに見えるが、それは虚像で本当は弱いのが、星野監督の実像ではないだろうか。