2010年11月12日(金)

6か国協議に向けて始動

 ソウルで開催されていた主要20カ国・地域(G20)首脳会議を機に2年近く止まっていた6か国協議が始動する気配をみせている。

 韓国の李明博大統領とロシアのメドベージェフ大統領は10日、ソウルでの会談後に北朝鮮の核問題について「外交的方法により包括的、完全、不可逆的な形で解決することが重要との認識で一致した」との共同声明を発表し、6カ国協議再開のための条件整備に向け緊密に協力することを確認しあっていた。

 また、6か国協議の主役である米国のオバマ大統領も李明博大統領との会談後の共同記者会見で「北朝鮮が『準備が整った』という証拠を示せば、再び協議を行うことが可能だ」と述べ、条件付きながら6か国協議再開に向けて意欲を示した。

 もう一方の主役である北朝鮮も外務省が「我々は6カ国協議を再開する準備ができたが、米国など一部の参加国の準備ができていないのならば、忍耐強く待つ」という談話をすでに発表していた。

 オバマ大統領が提示を求める「証拠」とは、6か国協議再開及び北朝鮮の非核化に向けての具体的な誠意を指すようだが、李明博大統領も米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで6カ国協議再開の条件について「北朝鮮は誠意ある態度を示さなければならない」と言っていた。

 李大統領のそれがオバマ大統領の求める誠意と同じかどうか定かではないが、これまで6か国協議再開への前提条件としていた哨戒艦沈没事件の謝罪ではなさそうだ。というのも、「謝罪が(協議再開の)前提条件になるか」と問われた際、明確な回答を避けたからだ。哨戒艦事件と核問題を切り離す考えならば、これで一つ障害が取り除かれたことになる。

 米韓両首脳が求める「誠意ある態度」が何を指すかははっきりしていないが、注目されるのは、今月上旬、北朝鮮外務省の招きで訪朝していた米国のジャック・プリチャード元朝鮮半島和平担当特使の発言だ。

 訪朝を終えて立ち寄った北京で、北朝鮮の寧辺の核施設を視察したことを明らかにした上で、「5千kw黒鉛炉は封鎖され、冷却塔も破壊されたままだ。核燃料棒の再処理などが行われている様子もない」(6日)と語っていた。北朝鮮に「核開発活動再開の動きは見られなかった」と説明していたのだ。どうやら北朝鮮は核施設を再稼動せず、冷却塔も再建築していないことを誠意、証拠として見せたかったようだ。

 これで、直ぐに0Kということにはならないと思うが、北朝鮮が寧辺施設でのプルトニウム開発から濃縮ウラン開発にシフトしている可能性や、水爆開発に乗り出しているとの疑いも一部では指摘されていることからどこかのタイミングで6か国協議を再開しなければならないのもまた否定しがたい事実である。

 年内開催となるのか、来年に持ち込まれるのか、朝鮮半島の焦点は6か国協議再開への動きに注がれることになりそうだ。