2001年8月5日(日)

注目される小泉総理の靖国参拝

 毎年終戦記念日の8月15日が近づくにつれて小泉総理の靖国神社参拝の有無が国内外で注目されている。日本では中国及び韓国が反対するのは「内政干渉ではないか」と反発する声もあるが、中国及び韓国が日本国総理の靖国神社参拝に反対する理由は、この神社が両国に多大な犠牲と不幸をもたらした日本軍国主義の象徴として捉えているからだ。

 日本の植民地統治下にあった朝鮮半島では解放される1945年まで日本政府の「皇国臣民化」 政策のもと民族意識が抹殺され、天皇に忠実な日本人に仕立てられた。「国民精神総動員運動」の名の下に朝鮮各地に神宮や神社が建てられ、参拝を強要された。神社参拝を拒否したことで不敬罪で投獄された人も多数おり、その中には獄死した者もいる。

 1943年からは「神棚」が各家庭に設置され、朝夕礼拝させられた。「天皇」を神として崇めるのが目的だった。天皇に仕える「臣民」に仕立てられたうえで今度は「 内戦一体」の名の下に「報国隊」や「徴用」「学徒兵」として戦場に強制動員された。兵士として戦場に駆り出された人は公表されただけでも23万人に達し、その他軍要員として各地の戦線に動員された人も約15万人に上った。

 靖国神社に安置されている韓国人の位牌はおよそ2万人と推定されている。「日本軍国主義の象徴」として映っている、まして戦争犯罪人である東条英機らA級戦犯らが合祀されている靖国神社への日本国総理の参拝は戦争被害国、被害者への冒涜として韓国では受け止めている。

 日韓間のもう一つの摩擦となっている「教科書問題」では、韓国政府が問題にしていた「新しい歴史教科書をつくる会」の本が全国の公立学校でほとんど不採択となっていることから反発が静まりつつあるが、小泉総理が8月15日に参拝を強行すれば、韓国の怒りは再び沸騰することになるだろう。

 小泉総理は「靖国参拝」後に韓国や中国との関係修復を考えているようだが、「靖国参拝」を既成事実化させたうえでの修復はある種の「示談」行為のようなもの。それならば、最初からやらなければ良い。

 やるならば、その結果についても一切責任を負うべきだ。いずれにしても小泉総理の決断が日本国、日本国民にとって賢明な選択だったかどうかは、日本人自らが判断、評価すれば良いのでは。