2013年1月4日(金)

日中の綱引きで、韓国は中国の手を上げた!

 日中間で綱引きをしていた靖国神社放火事件の中国人容疑者を韓国政府は、ソウル高裁の判決を理由に中国に引き渡すことにした。

 今回の一件で日本政府も国民も、韓国が日中のどちらをより重視しているか、思い知らされたことだろう。

 日本と韓国は国交を結んで今年で48年。それに比べて中国と韓国との修好は半分にも満たない21年。中国は共産党一党独裁社会主義体制下にあるが、同じ資本主義の韓国と日本は3権分立の民主主義体制下にある。まして日本と韓国との間には犯罪人の引き渡し協定があるが、韓国と中国との間にはない。常識からして、日本に引き渡すのが筋である。

 まして、この中国人は韓国でもよりによって日本の大使館に火を放そうとした言わば「放火魔」である。初犯ならまだ情状酌量の余地もあるが、二度となると日本としては黙っている訳にはいかない。日本政府が犯罪人引渡し法に則って引き渡しを求めるのは当然のことである。

 しかし、残念なことに事はそう単純ではない。

 日本政府は、民主主義という共通の価値観から韓国を重要なパートナーとしてみなしているが、韓国は実利、国益の観点から日本より中国のほうが「より重要なパートナー」と捉えているようだ。何よりも、韓国は日本とは「未来志向のパートナー」のレベルで留まっているが、韓国は中国に対して「戦略的パートナーシップ」の構築を求めている。

 国交こそ、遅れを取ったものの、韓国の対中貿易は、今では対日貿易(800億ドル相当)の約3倍近い2,200億ドルに上っている。ちなみに日韓貿易は韓国が中国と国交を結んだ年の1992年の310億ドルからたったの2.5倍の増だが、中韓は63億ドルから35倍の伸びだ。加えて、中韓貿易は韓国の黒字(400〜500億ドル)だが、日韓は韓国の慢性的に赤字(300億ドル)が続いている。

 中韓の人の往来も、日韓の546万人(2010年)に対して650万人と100万人も多く、貿易同様に年々、その差が拡大一方である。

 そして、日本にとっては耳の痛い話だが、昨年8月の米世論調査会社・ギャラップの調査では、韓国人の嫌いな国のトップがダントツで日本(44.1%)である。中国(19.1%)よりもはるかに高い。日本との間に領土問題や従軍慰安婦問題、歴史認識の問題が横たわっていることがその差になって表れている。

 この他にも、韓国には中国とは核やミサイルなど北朝鮮問題、あるいは脱北者の問題で協力を仰がなければならないという深い事情もある。

 日本はこれまでに常道かつ、律儀な外交を展開してきた。日本に漂着した北朝鮮の脱北者の引き渡しをめぐる南北の綱引きでは日本政府は国際法的な見地から、また人道的な見地から一貫して韓国に送還してきた。

 また、バーレンで身柄を拘束された大韓航空機爆事件の実行犯、金賢姫が「蜂谷真由美」という名の偽造パスポートを所持し、日本人を装っていたことからバーレン当局に日本への引き渡しを求め、韓国と綱引きを演じた際にも、韓国側の立場に配慮し、韓国への引き渡しを優先させた。

 最近の韓国哨戒艦沈没事件や延坪島砲撃事件などを例に取るまでもなく、日韓国交以来南北の対立では日本政府は一貫して韓国側を擁護してきた。これに対して韓国はどうか。

 尖閣諸島問題を含め日中間のもめ事で一度も、日本に組したことはない。北方領土問題をめぐる日露の紛争では傍観するどころか、択捉島には韓国の企業が進出し、ロシアの実効支配の既成事実化に貢献している始末だ。そして、今回の措置だ。冷酷だが、これが外交の現実だ。

 額賀福志郎日韓議員連盟幹事長が安倍総理の特使として今日、訪韓するが、何か出鼻をくじかれたようで、日韓関係の先が思いやられる。