2011年3月10日(木)

竹島に関する「問題発言」

 民主党の土肥隆一議員が「日韓キリスト教議員連盟」の日本側会長として、先月28日訪韓した際に発表された同連盟の日本政府に竹島の領有権主張の中止を求める日韓共同宣言に署名していたことがわかり、ひと悶着起きている。

 土肥議員は「個人的には竹島は日本の領土とは一概には言えないと思っている」と某紙にコメントしているので、言わばこの問題では「確信犯」であることは間違いない。共同声明の内容を知らなかったわけではなく、知った上で賛同し、署名したのだろう。「非国民」として罵倒されるのを覚悟の上で署名したとするならば、たいした度胸だ。

 では、これが韓国だったら、どうだろうか。果たして韓国の政治家に真似できるだろうか?まずあり得ないだろう。「売国奴」扱いされ、一瞬にして政治生命を絶たれるだろう。

 韓国には国会議員が299人もおり、その多くは日本との友好議員連盟に属しているわけだから中には一人ぐらいは「独島(竹島)はもしかしたら、日本の領土かもしれない」と、相手の立場に立って考えても良さそうなものだが、韓国の政治家にはそれはできないだろう。

 これが、相手が北朝鮮ならば話は別だ。黄海(西海)など領海をめぐる領有権問題で北朝鮮の主張に耳を貸す議員、国民はいる。しかし、日本との領土問題となると、事は違ってくる。全員が全員、大韓民国の国益優先だ。

 韓国政府の竹島問題への対応は「韓国の固有の領土であり、韓国が実効支配しており、日本との間には領土問題は存在しない」というものだ。言わば、尖閣諸島での日本の対応と同じだ。

 しかし、韓国が何を言おうが、誰が見ても、日韓の間には厳然として領土問題は存在する。また、尖閣諸島問題で日本政府が韓国と同じ言葉を発したとしても、どう転んでも、日中間にも領土問題が存在するのは歴然としている。現に外交摩擦や衝突が起きている。

 お互いが古い海図や巻物を引っ張り出して「うちの方が先に発見したとか、先につばをつけた」と言っても、相手が納得、承諾しない限り、問題は解決しない。

 日本では「日本の立場を国際社会にアピールする必要がある」との識者の声をしばしば耳にするが、どこの国も、領土や領海をめぐる領有権問題には首を突っ込まないし、ましてや一方の肩を持つことはあり得ない。現に同盟国の米国ですら、尖閣諸島での日本の実効支配は認めているが、今もって、領有権については態度を鮮明にしていない。

 尖閣諸島が日本の固有の領土で、日本が今も、実効支配しているならば、その証として、労働者を派遣し、閉鎖した鰹節工場を操業させたらどうか。皮肉なことだが、尖閣諸島を守るには韓国が日本側の抗議をよそに竹島の実効支配を着々と既成事実化させた手法を導入するほかない。

 島根県の人々からすると極めて腹の立つことだが、韓国は1950年代にはすでに8人の警察官を常駐させ、90年代に入ると、500トン級船舶が利用できる接岸施設を設置し、ついには有人灯台まで設置してしまった。そして、今では観光の「名勝地」にしてしまった。これらを一切合先撤去させ、再び日本に帰属させことは容易なことではない。

 日本政府は、同じ不法占拠であっても、北方領土の問題ではロシアに返還を求め、そのための外交交渉を呼びかけているが、竹島問題に関しては返還ではなく、韓国政府には立ち退くよう求める以外に打つ手はないようだ。

 しかし、半世紀以上にわたって「竹島は日本の領土、不法占拠は許さない」と主張してきたにもかかわらず、当然のごとく韓国は出て行こうとはしない。さりとて、実力行使による奪還も容易ではない。これが領土問題の現実だ。