2011年4月1日(水)

震災と竹島の狭間の韓国の対日関係

 日本は今、非常に辛く、苦しい時にある。世界各国からは次々と支援と援助の手が差し伸べられている。

 日本からのSOSに最も近い国の韓国は真っ先に救援隊を送り込んできた。韓国では支援活動や募金運動もかつてないほど活発だ。李明博大統領自身も駐韓日本大使簡を弔問し、哀悼とお見舞いを述べた。韓国の大統領としては、前例のないことだ。こうした一連の動きをみて、日韓関係は本当に近くて近い関係になったと、誰もが思ったはずだ。

 しかし、一昨日日本の教科書検定結果が発表されると、韓国の雲行きがおかしくなった。震災救援活動に影響し、寄付が著しく減少してしまった。29日には1067件あった一通2000ウォンのARS電話寄付が、検定結果が発表された日は、256件と大幅に減少してしまった。実に残念なことだ。

 日本大使館の門前は、弔問客ではなく、「韓国挺身隊問題対策抗議会」など抗議団体のメンバーに取って代わってしまった。抗議に訪れた一人は「我々は日本の災難に平和の手を差し出したが、日本は侵略歴史の時計を元に戻そうとしている」と叫んでいた。

 本国から日本政府に抗議するよう訓令を受けた駐日韓国大使が松本剛明外相に二度にわたって面談を申し入れたところ多忙を理由に断られたことも韓国民を刺激しているようだ。日本政府は文部省の教科書検定に続き、今日にも閣議を開き、竹島の領有権を盛り込んだ2011年外交白書を決定する予定で、これをめぐってまたひと悶着ありそうだ。

 日本政府は、領土問題と震災とは別問題で、震災で支援を受けているからといって、国家主権に関わる問題で譲るつもりはないとの考えだ。それはそれ、これはこれとの立場だ。日本の立場からすれば、当然のことだ。だが、残念ながら、結び付けて考えているのが韓国である。

 領土問題では島根県のカウンターパートナーにあたる慶尚北道の知事は「日本政府は大震災で試練に直面している最中に計画的に教科書を歪曲し、独島(竹島)侵略の野望を露骨に示した」との怒りの談話を発表していた。

 領土問題では日本同様に韓国でも与党も、野党もないようで、国会の独島領土守護対策特別委員会の委員長は「日本の大震災を助けようとした韓国に背信した日本政府の妄動の即時中断を求める」と述べ、「4日に日本政府に検定承認撤回を求める決議案を採択する」と息巻いていた。

 また、超党派の14人の議員が連名で「日本の主権侵害には抑制しつつも断固たる対応をすべきだ」との声明を読み上げていた。中でも、保守政党の自由先進党の議員は李大統領に対してロシアのメドベージェフ大統領と同じように独島を訪問するよう促していた。そうなれば、これまた、日本にとっては困ったことだ。

 日本が動き、それに反応して韓国が騒げば、騒ぐほど、日本にとって都合の悪い韓国の実効支配が強まるというのも、何とも皮肉な現状である。