2008年5月7日(水)

胡錦濤主席がやって来た

 中国の国家主席としては10年ぶりの訪日となるだけに胡主席としては、日本の風当たりを交わし、成果を挙げるには、パンダのプレゼントだけでは済まないだろう。日本が協力を期待している拉致問題でもサービスをしなければと考えているかもしれない。

 温家宝首相が昨年4月に訪日した際に日本の立場に理解を示し、「必要な協力」を約束したのはまだ記憶に新しい。その一ヶ月後、読売新聞(5月28日付)が「中国当局が拉致問題の解決に向けて安否不明の日本人拉致被害者や特定失踪者に関する情報を独自に収集することで日本への協力を検討している」との観測記事を流した。このことで「中国もいよいよ本腰を入れて日本に協力する気になったか」と期待する向きもあったが、蓋を開けてみると、この1年間中国がやったことと言えば、中朝貿易を前年の16億9千万ドルから19億7千万ドルと2億8千万ドル増やしたことだ。結局、温総理の発言はその場しのぎのリップサービスに過ぎなかった。

 胡主席は来日直前、平壌駐在の劉曉明大使を通じて金正日総書記に「世界中で北朝鮮が北京五輪の聖火リレーを一番立派にやってくれた」とお礼を述べていた。中国紙が書いているように「中国への贈り物」であり、「中朝友誼が強固になった」ならば、北朝鮮が困るようなことを中国がやるとはとても考えられない。あっちにも、こっちにも良い顔をして、漁夫の利を得る、これが中国外交の本質であることを忘れてはならない。