2009年9月25日(金)

鳩山総理の国連演説を思う

 鳩山総理の国連デビューは上々のようだ。演説も格調高く、経済大国としての誇りと自信と責任に満ちた演説だったと高く評価したい。

 核廃絶についても唯一の被爆国としての確固たる決意を表明し、その脈絡の中で隣国・北朝鮮の核問題を国際協調によって解決することを誓っていた。「6か国協議を通じた非核化に努力する」と言明したところをみると、これまでの「拉致問題が解決しなければ、核問題では油一滴、びた一文出さない」との立場を軌道修正するかもしれない。

 また、北朝鮮との関係については「日朝平壌宣言に基づき、国交正常化を目指す。拉致問題で北朝鮮が再調査などで誠意を示せば、日本も前向きに対応する」と演説していたが、総理引継ぎの際に麻生前総理から「日朝平壌宣言は生きている。北朝鮮問題を複合的視点から取り組んでもらいたい」と進言されたことを守った形となった。

 その一方で、韓国の李明博大統領との首脳会談では北朝鮮問題について「対話を通じた解決が望ましいが、必要なら制裁も不可避だ」と「制裁」を口にしていた。

 鳩山総理の政治哲学である「友愛」は、互いの立場を尊重し、価値観や違いを乗り越え、対話と協調で問題解決にあたることにある。「友愛」という美しい言葉を語る鳩山総理に「制裁」という言葉はどうみても似合わない。新たな出発点に立って、対話で問題を解決しようと呼びかけている相手に対して「必要ならばムチを使う」と威嚇するのは「友愛精神」に反するのではないだろうか。制裁がどうしても不可欠ならば、粛々と、黙々とやれば済むことだ。あえて口に出して相手の反発を誘発する必要性はない。

 それと、鳩山総理は李大統領に対して「日本は過去の歴史清算について強い意思を持っている」ことを表明したようだが、表明すべき相手は、すでに清算を終えている韓国ではなく、過去の清算が未解決のままの北朝鮮ではないのだろうか。

 そのことは鳩山総理も少しは理解していたようで、国連総会での演説では「拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を誠意を持って清算して国交正常化を図っていく」と北朝鮮にメッセージを発信していた。この鳩山総理の呼びかけへの北朝鮮の反応が待たれる。