2005年6月9日(木)

日本人妻平島筆子からの手紙

 4月18日に北朝鮮に戻った日本人妻、平島筆子さんから日本での後見人だった平沢勝栄議員に手紙が舞い込んできた。平沢議員がゴールデンウィーク前に北京の日本大使館を通じて北朝鮮に対して平島さんが北朝鮮に戻った真意と、日本に置いてある家財道具の処理について質したことへの返答のようだ。

 筆跡からして平島さん本人が書いたものであることは間違いない。手紙には「私が買っていた家具、衣類を処分してください」と書いてあるが、処分という意味は、「捨ててください」という意味にも、また「北朝鮮に送ってください」という意味にも、あるいは「売って、その代金を送ってください」というふうにも取れる。

 もう一つ、興味深い点は「日朝国交正常化のため努力してください」「是非、朝鮮に来てください。先生と朝鮮でお会いできる日を待っています」と、平沢議員の訪朝を積極的に働きかけていることだ。北朝鮮当局の許可なく、いち個人が外国から人を招くことはできない。従って、この部分は、北朝鮮当局が平島さんを通じて平沢議員にメッセージを送ったものと解釈される。北朝鮮が平沢議員をなぜこの時期に招こうとしているのか。膠着した日朝関係を打開するためのパイプ役として期待しているとの見方もある。しかし北朝鮮としてはそれ以前に、現在北朝鮮に「滞在している」二人の日本人の問題を解決したがっている。

 一人は、一昨年8月に北朝鮮に「亡命申請」した北川和美という女性、もう一人は麻薬保持の容疑で身柄を拘束された沢田なる男性で、二人とも、現在ホテル住まい。沢田なる人物が拘置所や刑務所ではなく、ホテルというのもおかしな話だが、いつかは日本に返す身なので、収容施設の実態が外部に洩れるのを嫌って、ホテル住まいさせているのではないかと推測される。二人とも2年近くもホテル暮らしなので、その滞在費は半端ではない。一人につき1千万円は軽く超えているだろう。北朝鮮は二人の扱いに手を焼いている。国外退去させれば事は済むのだが、代金を支払なければそれもできないようだ。二人とも所持金ゼロ、無一文で、日本からは誰も立て替えを名乗り出る人も、親族もいない。

 北朝鮮とすれば、かつて「スパイ容疑」で身柄を拘束した元日経記者の時と同じ解決方法、即ち外務省から「迷惑をかけた」との一筆を取り、かつ代金を立て替えさせようとしている。ところが、拉致問題との関係で外務省とは直接交渉ができないのが現状。そこで政治家を使って、日本政府に働きかける、これが平島レターの、北朝鮮側の狙いだ。これがうまくいけば、平沢議員と復権した山崎拓議員のラインを再稼動させ、小泉政権と再度、国交交渉に向けた話し合いを再開させたいというのが北朝鮮側のシナリオのような気がする。北朝鮮側とすれば、「保釈金」さえ出せば、二人を解放するということだが、日本側とすれば「金が欲しければ外務省との正式な交渉に応じて、拉致問題にも誠意を示せ」ということだ。この二人、日朝交渉再開のカードとなるかもしれない。