2013年3月18日(月)

北朝鮮の対日核攻撃の可能性は?

 北朝鮮の労働党機関紙・労働新聞は昨日(17日)、日本政府が北朝鮮に対する独自制裁を検討していることなどに反発し、第二次朝鮮戦争が勃発すれば、「日本も核先制攻撃の対象になる」との個人の署名入り記事を掲載していた。日本を韓国同様に米国の追随勢力と位置付けての牽制のようだ。

 北朝鮮の見解は、最高司令部の声明や外務省声明で出されたものではなく、また労働新聞の社説で言及されたわけでもない。従って、北朝鮮政府の公式見解とはみなされないが、党機関紙に掲載されたこと自体、金正恩政権の意中を反映していることは100%間違いない。

 朝鮮半島で軍事的緊張が高まる度に「日本もただでは済まされない」と脅すのは、北朝鮮の「お家芸」だ。過去には、平壌市内にワシントンとソウル、東京を同時標的にしたミサイルのポスターが公開されたことももあった。日本海に面した北朝鮮のミサイル基地に日本を射程に定めたノドンミサイルが配備されているのももはや公然たる事実である。

 それでも、日本に対する核攻撃の言及は、北朝鮮が2005年2月に核保有を宣言し、翌年の2006年10月に核実験を行って以来、かつて一度もなかったことである。軽視できないばかりか、非核保有国を核で脅すとは、言語道断である。

 日本への核攻撃には「米国が核戦争を引き起こした場合」とか「自衛隊が戦争に介入すれば」との前提条件が付いている。米国が同盟国の日本と韓国を巻き添えにするような核戦争を引き起こすことは考えられない。また、現憲法下では自衛隊が参戦することもない。従って、現実的には日本に向け北朝鮮の核が発射される可能性はゼロに近い。

 とは言うものの、38度線が決壊し、朝鮮半島で全面戦争が勃発すれば、日本が巻き込まれ、火の粉をかぶるのは避けられない。日米安保条約の中(第6条)に日本の安全と、極東における国際平和と安全を維持するため米軍が日本の施設と区域を使用することが許されているからだ。

 朝鮮半島で火が噴けば、日米安保条約が適応され、日本は米軍の補給基地、兵站基地、あるいは後方基地になるのは自明だ。日本から武器弾薬、燃料など軍需救援物資が運ばれ、在日米軍基地から戦闘爆撃機が発進され、日本の港から米軍の艦隊が出動することになる。

 いずれも戦闘に直接加わらない後方支援であったとしても、北朝鮮が「準軍事行動」とみなすのは間違いない。北朝鮮がノドンミサイルを開発し、日本海に配備したのは「後方基地を叩かずして、第二次朝鮮戦争には勝てない」との第一次朝鮮戦争から得た教訓でもある。従って、全面戦争に突入した場合は、日本本土が湾岸戦争の際に多国籍軍に協力したサウジアラビアのようにミサイルの脅威にさらされるのは確実だ。

 問題は、ノドンミサイルに核を装着する危険性だ。米国家情報局(DNI)のジェームズ・クラッパ局長は2年前に「北朝鮮は敗戦寸前にならない限り、核を使用しないだろう」と議会で証言していた。先月も「金正恩は生存危機を感じなければ、米国に向け核を使用しないだろう」と語っていた。

 この言葉は、裏を返せば、「絶体絶命となれば、核を使うだろう」と聞こえなくもない。

 全面戦争となれば、米韓連合軍は「5027作戦」のもとで、平壌を陥落させ、金正恩政権を駆逐し、朝鮮半島を韓国主導で統一することになっている。従って、米韓連合軍が勝利すれば、金正恩第一書記は「第二のサダム・フセイン」になり、北朝鮮は地球上から消滅した東ドイツの二の舞となる。

 労働新聞は「朝鮮半島で戦争の火花が散れば、日本も決して(核先制攻撃の)例外ではない。これは脅しではない」と主張しているが、北朝鮮が一発でも核を使用すれば、その瞬間、北朝鮮は米国の核の報復を受け、地球上から消えることになるだろう。この最悪のシナリオをわかっていれば、金正恩氏がよほどのことがない限り、核のボタンに手を掛けることはないだろう。