2012年3月5日(月)

微妙に変わった松原大臣の発言

 米朝合意には拉致問題の言及はない。米国は核やミサイル問題など自国の国益を最優先させ、北朝鮮への人道支援(24万トンの栄養支援)を決めてしまった。米国が先に食糧支援のカードを使ってしまったため、北朝鮮への食糧支援の未納(12万5千トン)を含む日本の経済制裁は効力を失うばかりだ。米国に続き、南北関係の修復を急ぐ韓国が今後、食糧支援をカードにすれば、日本はいつまで経ってもとっておきのカードが切れない状態が続く。

 米朝が動いた今こそ、日本も独自に拉致問題解決の方策を見出さなければならない。どうやら松原仁拉致担当大臣も同じ認識のようだ。

 松原大臣は2日午前の記者会見で安否不明の日本人拉致被害者について「再調査の結果、仮に死亡しているとされた方々が、実は生存をしていたと主張を変えるならば、拉致問題解決への大きな前進と考える」と言ったそうだ。

 松原大臣は野党の時代に制裁の一部解除を見返りに取り付けた再調査について「北朝鮮は再調査すると言っているようだが、言葉の遊びだ」と「日朝合意」をのっけから相手にしてなかった。日朝合意そのものを「日本外交の敗北」と批判していた。

 松原大臣の今回の発言は、生存を前提とする再調査、即ち生存者を見つけるための再調査ならば評価するとのことのようだ。ならば「北朝鮮が再調査に着手したからといって直ちに制裁を解除すべきではない」という考も改め、どうやら再調査と同時に制裁の一部解除に同意するのかもしれない。

 では、再調査に関する北朝鮮側のスタンスはどうか?北朝鮮は被害者の家族が納得できないのでもう一度調べてもらいたい、他にも拉致された人がいる可能性があるのでもう一度調べてもらいたいとの日本側から強い要請があったので再調査するというようなもので、「再調査しなければ、生存しているのか、他にもいるのかわからない」(ソン・イルホ朝日正常化交渉担当大使)という捉え方だ。それでも、とにもかくにも、今は、日朝協議を再開させ、北朝鮮に再調査をさせてみることが日本にとっては急務、先決のようだ。