2011年9月15日(木)

北朝鮮から「脱北木造船」がやってきた

 北朝鮮から日本に脱北者が木造船でやって来たということで大騒ぎとなった。8メートルそこそこの小さな木造船には成人男女6人と子供3人が乗船しており、聞けば、韓国への亡命を求めているとのことだ。

 韓国への「脱北」は昨年1年間で2、376人。今年もすでに上半期だけで1,428人で、月平均で238人だ。韓国からすれば「またか」という程度の日常茶飯事の事件だ。

 それが日本でこれだけ大騒ぎとなるのは、日本にはめったに来ることがないからである。日本への亡命は1987年に福井に、2007年6月に青森に漂着したケース含めてこの24年間でたったの3件だ。

 まして、まともな船ならいざ知らず、エンジンが備え付けてあるもののボートに毛が生えた程度の小型の船で750kmも離れた日本海を渡ってきたからわけだから「アンビリーバブル!」との大合唱になった。

 現在、長崎の入管に保護されている9人に対してこれから事情聴取が行われることになるが、日本政府は4年前に青森に漂着した脱北家族について氏名も履歴も顔写真も一切公開しなかった。北朝鮮に残された親族に危害が及ばないようとの配慮のためだ。今回も同様の措置が取られるだろう。

 青森のケースは「新潟を目指して来た」と語っていたようだが、今回は日本ではなく、最初から韓国への上陸を企図していたようだ。それが、進路を誤ったのか、潮に流されてしまったのか、意に反して日本にたどり着いたとのことのようだ。

 青森に漂着した4人は、56歳の元漁師と62歳の妻、それに30歳の専門学校生の長男と26歳の漁師の次男は26歳の4人で、一家の生計はたこ漁師次男が生計を支えていたと言われていた。

 今回も9人のうち「人民軍兵士」と名乗るリーダー格の男性が「外貨獲得のためたこ漁をしていた」と言っているようだが、漁をするから船を扱うことができ、燃料も調達できたのだろう。

 家族が生きるため、食べるため脱北してきた経済難民ならば国連難民保護法や2006年に施行された北朝鮮人権法にのっとって人道的に対応し、希望の地の韓国に行けるよう最大限配慮すべきだ。

 しかし、万が一、何らかの犯罪にかかわったうえでの逃亡ならば、問題となるので徹底した事情聴衆の上、韓国に送還すべきだろう。というのも、2000年から2005年6月まで韓国に亡命した脱北者4,080人のうち10.7%にあたる436人が北朝鮮や中国、あるいは逃亡地の第三国で犯罪を犯していたことが明らかになったからだ。これはあくまで自己申告によるもので、実際にはもっと多いものと推定されている。

 これは、当時野党だったハンナラ党の議員が統一部に提出を求めた国政監査資料で判明したことだが、それによると、殺人10人、人身売買23人、麻薬密売10人、強姦・強盗・窃盗など151人、公金横領21人となっていた。

 ボートピープルの日本亡命が成功したということが口コミで北朝鮮に伝われば、北朝鮮には脱北予備軍が大勢いるわけだから、今後日本に向かってくる可能性は大いにある。まして中国ルートが厳しければなおさらのことだ。船の大小に関係なく、生きるためには、逃げるためにはまた強奪してでも、船を手に入れてやって来るだろう。