2010年9月18日(土)

前原外相の「北朝鮮観」

 菅政権の内閣改造で、前原誠司さんが外相に就任した。

 一般的には前原外相は、歴史認識や安全保障や外交問題では「タカ派」とみられがちだ。

 例えば、民主党代表時代の「マニフェスト2005」をみると、中国や韓国との紛争の火種となっている靖国参拝問題についても「東京裁判の正当性など検証すべき点がある」と東京裁判に異議を挟んでいた。それでも、靖国神社に合祀されているA級戦犯については「他神社への遷座による解決を目指す」と現実的な認識を示している。

 また、竹島(独島)でもめる韓国とはFTA(自由貿易協定)を促進し、東アジア共同体構想を積極的に推し進めるべきとの考えを持っており、基本的には岡田克也前外相同様にアジア外交重視の姿勢を明らかにしている。

 但し、北朝鮮問題に関しては「強硬」で、過去に北朝鮮を「軍事独裁国家」と規定し、毅然たる外交を主張してきた。国交正常化についても小泉純一郎元総理ほど積極的ではない。基本的には「待ちの姿勢」である。

 小泉政権時代には国会での質問で「国交正常化交渉の段階で食糧援助すべきではない」「国交正常化交渉では北朝鮮の覚醒剤の問題も入れるべきだ」「国交正常化は拉致問題などの全面的な解決が前提である」など等様々な条件を付けてきた。

 特に朝鮮総連については手厳しい。

 「朝銀問題では、いろいろ刑事事件、民事事件で立件されているが、これは朝鮮総連の組織ぐるみによるものであって、個人の犯罪に矮小化してはならない」

 「私が総連の元幹部の方々、複数の方々に話を伺ったところでは、こうした問題は許宗萬責任副議長を中心とする総連の指示があってやったということだ」

 「朝鮮総連が組織としてこのような朝銀の焦げ付きを起こしたならば、債権回収の矛先は朝鮮総連に、その資産管理団体に向けなければならない」と、

 朝銀の不良債権問題では容赦のない発言を繰り返していた。

 前原さんは、代表時代の頃、参議院選挙前に公約を発表したが、北朝鮮については「北朝鮮人権侵害救済法案を成立させるとともにその解決に向け、拉致被害者、家族全員の速やかな帰国と真相究明に全力を挙げる。『改正外為法』『特定船舶入港禁止特別措置法』の発動も視野に入れて、積極的に取り組む」と、圧力と制裁にウェイトを置いていた。

 以上の発言を見る限り、拉致問題や国交正常化問題で菅政権が急に柔軟に対応することは考えられない。制裁と圧力重視の路線に大きな変更はないだろう。

 しかし、核問題での対応には変化がみられるかもしれない。

 前原外相は一貫して北朝鮮核問題の平和的、外交的解決を求め、安部政権時代の2007年には6か国協議で合意した場合、拉致問題の進展がなくても、日本も合意に従い、重油支援を行なうべきとの立場を取り、「拉致問題の解決なくして、重油支援を行わない」とする安倍政権を批判していたからだ。

 「拉致問題があるからといって、6か国の合意である重油支援に加わらないことは国益に反する」との持論を持つ前原外相は6か国協議が再開されれば、これまでとは違った対応を見せるかもしれない。