2011年8月9日(火)

米韓軍事演習vs中朝軍事協力

 今年も恒例の米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」(UFG)が16日から10日間の日程で行われる。

 例年と違うのは、北朝鮮が対決姿勢をむき出しにせず、米韓両国に対して「米朝関係、南北関係を正常化すためにも、また非核化を実現するためにもその一歩として軍事演習を中止してもらいたい」とソフトに促していたことだ。特にオバマ政権に対しては「中止の政治決断することで非核化への意志を示してもらいたい」と切望していた。

 今回の演習には、核兵器やミサイルなどの大量破壊兵器(WMD)合同機動部隊による北朝鮮のWMD探知と廃棄・解体・移動を目的とした訓練も含まれる。

 米韓両国は2009年から北朝鮮のWMDと関連した連合訓練を実施しており、毎年春に実施されるキーリゾルブ訓練では実際に兵力と装備を動員した実戦訓練も行っている。北朝鮮の急変事態の際にWMDが海外に流出しないよう遮断し、北朝鮮軍がWMDで韓米両国軍を攻撃しないよう破壊して無能化することが今回の演習の主たる目的だ。

 今年は、海外増員米軍3000人を含め2万5000人余りの米軍と作戦司令部級以上の韓国兵力20万人余りが参加する。また、今回の練習には韓国の陸海空3軍参謀総長が初めて参加する。

 北朝鮮の核とミサイルの脅威がなくならない限り、米国が「はいそうですか」と中止するとは考えにくい。また昨年に起きた「哨戒艦撃沈事件」や「延坪島砲撃事件」について北朝鮮が謝罪し、南北の軍事的緊張が緩和されない限り、韓国政府もまた「わかりました」というわけにはいかないだろう。

 今年は、もう一つ、例年とは違うのは。UFGを前に中朝両国が軍事協力を誇示したことだ。

 中国海軍訓練艦隊所属の練習艦「鄭和」とミサイル護衛艦「洛陽」から構成される中国海軍の訓練艦隊が4日に東海岸の元山に入港した。北朝鮮への中国艦隊の寄港は実に15年ぶりのことである。5日には金英春人民武力部部長を表敬訪問し、6日には鄭明道北朝鮮海軍司令官や朴載京人民武力部副部長らが中国訓練艦隊を訪れ、交流を深めている。

 中国の訓練艦隊の北朝鮮訪問は、「中朝友好相互援助条約」締結50周年記念行事の一環ではあるが、7月25日に大連軍港を出港する前に艦隊の指揮官である田中・北海艦隊司令官は「中朝の軍事関係を一層強化するための重要な外交行動だ。国家関係を強化し、友好を深め、共同発展を推進することに大きく寄与する」と述べていた。

 また、元山港に寄港したその日の歓迎宴では「あらゆる試練と風波を乗り越えた中朝親善はなにをもってしても壊すことのできない共同の価値である」としたうえで「両海軍の親善関係を発展させ、東北アジアの平和と安定に寄与する」と語っていた。

 一回だけの単なるセレモニーに終わるのか、それとも、これを機に中朝軍事協力が強化されるのか不明だが、韓国のメディアは、中朝軍事協力をそれほど心配していないようだ。

 いずれにせよ、中国海軍の艦船の日本海に面した北朝鮮港への寄港が常習化しなければよいのだが、北朝鮮が非核化の見返りとして仮に中国に安全保障の担保を求めているとすれば、いつの日か、新型戦闘機の供与も、海軍を中心とした中朝軍事協力の強化も全くあり得ない話ではない。