2010年5月31日(月)

南北チキンレースの始まり

 哨戒艦事件で朝鮮半島情勢がどうなるのか、武力衝突に発展するのかに関心が注がれた。当然のことだ。隣国日本としては、対岸の火事ではいられない。

 多少の小競り合いはあっても、局地戦争、全面戦争には至らないと思うのだが、油断は禁物。時に戦争と言うのはちょっとしたことで、偶発的なことで起きる場合があるからだ。

 朝鮮戦争休戦(1953年)以後、戦争の危機に直面した事件を挙げてみよう。一触即発だったワースト10は以下のとおりだ。

 @「プエブロ号事件」(1968年1月)

 A「板門店事件(ポプラ事件)」(1976年8月)

 B「第一次核危機」(1994年6月)

 C「EC121偵察機撃墜事件」(1969年4月)

 D「青瓦台(大統領官邸)襲撃未遂事件」(1968年1月)

 E「ラングーンテロ(全斗煥大統領暗殺未遂)事件」(1983年10月)

 F「文世光事件(朴正煕大統領暗殺未遂事件)」(1974年8月)

 G「大韓航空機爆破事件」(1987年11月)

 H「第一次海戦(西海南北艦船銃撃戦)(1999年6月)

 I「北朝鮮潜水艦浸透事件」(1996年9月)

 韓国側が圧倒的に被害を被っていることは一目瞭然だ。

 李明博大統領が5月24日の談話で「我々はこれまで、北朝鮮の蛮行に耐えに耐えてきた。それも、これも朝鮮半島の平和を切に願うからだ」と言った意味がよくわかる。

 李大統領は「これからは違う。北朝鮮にそれ相応の代価を払わせる」と言っていたが、「我慢にも限界がある」ということなのかもしれない。

 問題は、代価の払わせ方である。「断固たる対応を取る」と言った以上、誰が仲裁に入っても、北朝鮮が関与を認め、謝罪しない限り、引き下がるわけにはいかないだろう。さりとて、「やってない」と無関係を主張している北朝鮮が謝罪するはずもなく、このままでは李大統領としては振り上げた拳を下すにも下せない。

 今週には拡声器による非難放送が始まる。仮に北朝鮮が拡声器に向けて発砲すれば、「反撃する」と、国防長官は北朝鮮に警告を発している。

 方や、北朝鮮は昨日、平壌で10万人群集大会を開き、李大統領を「逆賊」と名指し批判し、「報復には報復で、局地戦には局地戦で、全面戦には全面戦で応じる」と「臨戦態勢」の雰囲気を醸し出していた。拡声器放送が始まれば、北朝鮮は本当に発砲するのだろうか?

 渡り蟹のシーズンを迎えるこの6月、例年同様に北朝鮮の警備艇は大挙、南下し、韓国の「領海」に入ってくるのだろうか?その場合、韓国艦船は無条件「報復」をするのだろうか?北朝鮮も逆に「領海侵犯」とみなし、無慈悲反撃するのだろうか?

 いよいよ南北のチキンレースの始まりだ。大事にいたらなければ良いのだが、南北双方に自制を求めたい。