2010年5月25日(火)

李大統領の哨戒艦沈没事件関連談話

 李明博大統領の国民向け談話は予想どおり、韓国政府が今、取ることのできる精一杯のことが盛り込まれていた。

 軍や保守層には3月26日に起きた哨戒艦沈没事件を「9.11テロ事件」と同等に捉え、北朝鮮への軍事報復を求める声もあったが、蓋を開けてみると、ブッシュ大統領のように「かかってこい」というわけにはいかなかった。強がりを言っても、韓国としては、ブッシュ政権がアフガンやイラクに軍事攻撃を仕掛けたようにはいかない。当然だ。戦争勃発となれば、北朝鮮と共に韓国も廃墟となる。

 韓国政府が軍事的な対抗措置としてできることと言えば、米国との軍事演習の再開と北朝鮮への宣伝放送の再開ぐらいなものだ。いずれも目新しいことではない。過去にやっていたことを復活するだけだ。

 韓国の哨戒所から拡声器を使った宣伝放送の再開ついて北朝鮮人民軍は早速、「再開されれば、除去のため拡声器に照準射撃を加える」と脅しているが、韓国も国防長官が「そうすれば、自衛権を行使する」と反撃を示唆しているので、拡声器除去のための武力行使をできるのか、北朝鮮の本気度が試されるというもの。北朝鮮が手出しできなければ、北朝鮮の脅しは単なるハッタリということになる。そうなれば、韓国の勝ちだ。

 また、李明博大統領は談話の中で「北朝鮮が韓国の領海を武力侵犯すれば、即刻自衛権を行使する」と明言したが、北朝鮮の警備艇が韓国の領海に入ってき場合、即刻武力行使ができるのか、今度は、韓国の本気度が試されることになる。

 北朝鮮が李大統領の談話に怖気づき、NLL(北方限界線)を越え、南下してこなければ、韓国の領海であることを認めることになるので、北朝鮮とすれば、危険を冒してでも、入ってくるだろう。その時、韓国はどうするかだ。「自衛権を行使する」と宣言した以上、武力衝突、局地戦を覚悟しなければできない。北朝鮮は覚悟の上で、入ってくるので、そうなれば韓国としてもやっかいだ。

 来月6月は、いよいよ渡り蟹漁獲の絶頂期を迎える。例年、北朝鮮の警備艇が自国の漁船の安全操業と中国船の不法操業を取り締まるため沈没事件のあった現場に集結する。過去に1999年と2002年と2度、南北艦船による海戦が起きているので来月が南北双方にとって一つの正念場となる。