2012年7月23日(月)

金正日専属料理人の電撃訪朝の舞台裏

 金正日総書記の専属料理人を務めていた藤本健二氏が一昨日、電撃訪朝した。2001年に北朝鮮を「脱出」してから11年ぶりの再訪朝だ。本人の話では、金正恩第一書記直々の招待によるもので、先月中旬に日本で関係者から招待状を手渡されたそうだ。

 それにしても驚いた。「金正日の料理人」や「核とミサイルと女を愛した将軍様」などの立て続けに暴露本を出す一方で、テレビに出演し、北朝鮮が国家機密扱いしていた金正日ファミリーのプライバシーを赤裸々に語っていた藤本氏は言わば、北朝鮮の暗殺ターゲットNo.1とみなされていたからだ。そのことは、整形のうえに変装までし、さらには防弾チョッキを片時も手放さなかったことでわかるように藤本氏自身も自覚していたことだ。

 金正恩氏が、藤本氏の手料理を食べたいが食べに呼んだのか、あるいは将来、日朝間のパイプ役に利用するため呼んだのか、定かではないが、いずれにしても藤本氏のこれまでの言動をチャラにするとは、正恩氏によほどの魂胆があるのだろう。

 招待を受ける側の藤本氏も「罠かもしれない」との不安を抱きながらも訪朝を決行するとは、これまたよほどの覚悟だ。二人の間には第三者にはわからない「信頼関係」でもあるのだろうか。

 実は、藤本氏は金正日総書記存命中も何度か、直接手紙を出していた。それらはいずれも届いていたそうだ。おそらく金正恩氏が最高指導者に就任した時も祝福の手紙を出していたのだろう。その中でこれまでのことを反省して、今後は生涯を掛けて、金正恩氏のために尽くすとの決意表明をしたのかもしれない。

 そもそも藤本氏は金正恩氏についてはこれまで一言も悪口は言ってなかった。書物でもテレビ番組でも正恩氏への評価と期待は口にしても、他のゲストの批判に同調することは一度もなかった。

 韓国で出版された単行本「北朝鮮の後継者、なぜ、金正恩なのか」も正恩氏のPRに徹していた。もしかすると、この本が評価されて、今回の訪朝に繋がったのかもしれない。

 いずれにしても3週間ぐらいの滞在ならば、8月の第二週には帰国することになっている。無事帰国できれば、今後、藤本氏は日朝間の重要なパイプ役となるかもしれない。