2011年6月30日(木)

金正日訪ロがドタキャン!

 金正日総書記のロシア訪問は急遽中止となった。

 この件についてロシアのチマコワ大統領報道官は昨日、メドベージェフ大統領のウラジオストク訪問では、「そのような会談の予定はなかった」とか「われわれは(金総書記)が来るとは一度も言っていない」と語っているようだが、外電によると、ウラジオストクの地元当局者は「金総書記を迎える準備を進めていた」ことを暗に認めていた。

 その準備の一環として、ロシアと北朝鮮の国境の駅では、金総書記のための赤じゅうたんを用意していたほか、北朝鮮側の依頼に応じて、列車を降りる際に使う台に手すりを取りつけるなどの受け入れ態勢を整えていたそうだ。それが、ウラジオストクの警察関係者らの話では「直前になって金総書記の訪問は中止になった」とのことだ。

 中止の理由についてはいろいろ取り沙汰されている。

 フジテレビが伝えるところでは、北朝鮮側から出発当日の29日になって、「総書記の健康上の理由」から、訪問を中止するとの連絡が入ったとのことだ。

 かつて、健康上の理由から金総書記の外遊あるいは首脳会談が取りやめになったことは一度もない。

 また、金総書記の健康問題は最高機密に属する問題だ。本当に健康を害しているなら、外に向かって「体調がおもわしくないから」とは絶対に公言しない。従って、「健康上」は表向きの理由に過ぎない。

 本当に健康が悪化しているならば、ここしばらく、金総書記の動静は途絶えることになるだろう。それは、それで大問題である。

 一方、毎日新聞はウラジオストクの情報筋の話として、「ロシアは会談でロシア極東から北朝鮮を通じて韓国に至るガスパイプラインの建設での合意を目指していたが、北朝鮮の金英才駐露大使が28日、露政府系天然ガス企業ガスプロムのミレル社長とモスクワで会談した際、拒否の意向を伝えたことから、ロシア側が会談の取りやめを決めた」とその理由を伝えていた。

 これもいまひとつ説得力に欠ける。先月17日にロシア対外情報局のミハイル・フラトコフ長官が平壌を訪れ、金総書記と会談した際に核問題のほか、このガスパイプラインや送電線の建設などの経済プロジェクトについて話し合われていたからである。気に食わなければ、この時点で拒否し、訪ロ招請を受託しなかったはずだ。

 金総書記は2002年4月に金大中大統領の特使として訪朝した林東源国家情報院長と会談した時に「(金大中大統領に対して)ソウルの代わりにロシアのイルクツクで会談し、必要ならば、ロシアの大統領を含めた3国首脳会談を開き、シベリア鉄道との連結問題を協議することを提案したが、金大中大統領がソウルもしくは板門店での会談を逆提案してきたためロシアでの首脳会談が流れた」との秘話を語っていた。

 韓国から北朝鮮を通る南北縦断鉄道とシベリア横断鉄道の連結には賛成で、極東から北朝鮮を経由して韓国に至るガスパイプラインの建設には反対というのは、どう考えても矛盾している。

 韓国の聯合ニュースは中止の理由について情報筋の話として、「両国が議題に対する見解の相違を埋めることができなかった」と伝えていた。

 最後まで議題の折り合いが付かなかったことが事実なら、今年1月13日のブヌーコフ駐韓ロシア大使の韓国の聯合ニュースの新年インタビューにそのヒントがあるようだ。

 駐韓ロシア大使は以下のようなことを言っていた。

 「北朝鮮が核を放棄すれば、ロシアと韓国、北朝鮮を連結するガス管と電力網、鉄道網の構築を本格的に推進する用意がある」と表明し、韓国が提案している北朝鮮核問題解決のための一括妥結案(グランドバーゲン)に組み込む意向を表明した。

 要は、メドベージェフ大統領が北朝鮮に核放棄を迫り、韓国のグランドバーゲン提案を受け入れない限り、金総書記が今回の訪ロで求める大規模の経済援助、80億ドルに上る対ロ債務の全額削減、MIG−29戦闘機やS―300迎撃ミサイルなど最新兵器の供与などが受け入れられないことがわかったので、急遽取りやめたということなのだろうか。なんとも不思議だ。