2010年10月27日(水)

正男氏がまたまた物議!

 ドイツのベルリンを訪問中の韓国大統領の諮問機関、民主平和統一諮問会議の李基沢(イ・ギテク)首席副委員長が一昨日(25日)「正男氏が北朝鮮の体制崩壊の可能性を念頭に置く発言をしていた」と在独韓国人向けの講演(演題:「共栄の対北政策」)で明らかにした。

 李基沢氏は先月、正男氏が暮らすマカオを訪問した際、正男氏と親密な関係者からこの話を耳にしたとのことだ。

 李氏の話によれば、正男氏はこの「親密な関係者」から「父親の具合が悪いのになぜ平壌に行かないのか。バトンタッチしに行く必要があるのでは」と問われた際「どうして行かなくてならないのだ。バトンタッチなどしたくない。滅びるのに。(北朝鮮が)長く続くと思うか」と答えたというのだ。

 李氏には、彼が野党党首時代の1990年代に一度会ったことがある。誠実で、清廉潔癖な政治家との印象がある。決して嘘をつくような人ではないが、いつだったか、一度だけ金正日死亡説を流した「前科」がある。金総書記が随分長い間、公の場に出なかった時に、外国の情報機関から聞いた話として「死亡している」と発言し、波紋を招いたことがあった。

 今回も正男氏から直接聞いた話ではない。又聞き情報である。それでも、正男氏の「親密な関係者」から直接聞いた話であることには変わりはない。

 この発言が事実なら、不適切発言どころでは済まないだろう。北朝鮮にとっては、妄言に近い。仮に李明博大統領が口にしたなら、北朝鮮は再び、韓国との関係を断絶するだろう。それほどの猛反発を招きかねない発言である。金総書記は、このまま正男氏をほっておかないだろう。

 一方の正男氏も当然覚悟があってのことだろう。おそらく二度と北朝鮮には戻るつもりはないのだろう。

 「親密な関係者」が今付き合っている韓国人ガールフレンドなのか、あるいは周辺の韓国人ビジネスマンなのか、それとも中国人なのかは不明だが、「親密な関係者」が本人の了解のもとに外部に漏らしたなら正男氏はまさしく「確信犯」である。逆に内緒話を勝手に漏らしたなら、「親密な関係者」との関係を絶ち切るのではないだろうか。

 しかし、常識に考えてみると、正男氏と本当に親密な関係にあるならば、内輪話を韓国の要人に漏らすだろうか。もし、外に洩れ、公になれば、正男氏が困ることになるのは自明だ。へたをすると、身に危険が及ぶかもしれない。「親密な関係者」ならば、正男氏を庇うことはあっても、窮地に陥れるようなことはしないのではないのだろうか。

 韓国のKBSが14日に金総書記が8月下旬に訪中した際に正男氏が突然宿舎に現れ、「正恩は強引に貨幣改革を推進し、その失敗を挽回しようと哨戒艦事件を引き起こした。お父さんはなぜ、これを黙認するのか」と抗議したと報道したばかりだ。

 KBSの情報源も「正男氏の中国における側近」だった。もしかすると、正男氏の「親密な関係者」と「中国における側近」は同一人物かもしれない。狙いは何なのだろう?

 いずれにしても、すでにこの話が記事になり、世界中に打電された今となっては、正男氏が「そのようなことは言っていない」と弁明、釈明しても、もはや手遅れである。正男氏が「3代世襲に反対する」と言い、「北韓」と発言したのは間違いないわけだから金総書記は、正男氏の否認に耳を貸すことはないだろう。

 正男氏は、今後も翻弄され、好むと好まざるにかかわらず父親や異母弟の正恩(ジョンウン)氏との対立の渦に巻き込まれるだろう。このまま悲運の運命を辿るかもしれない。