2011年6月9日(木)

「韓国型」を目指す北朝鮮の経済特区

 金正日総書記の訪中の目的の一つは、中国との国境の一部を自由貿易地帯、経済特区として中国に開放し、経済再建に繋げることである。そのことは、8日に中朝国境を流れる鴨緑江に浮かぶ北朝鮮側の島、黄金坪島で中朝合作による工業団地建設の着工式が行われたことからも自明だ。

 日韓のメディアは、金正日訪中期間中にも行われる予定だった着工式が中止となったことで、「中国からの経済協力の取り付けに失敗した」と報道していたが、実際はそうではなかった。延期されていただけの話だった。

 黄金坪島と威化島については北朝鮮は信じられないことに「第二の香港」「第二のマカオ」を夢見ているようだが、それは非現実的な話としても、少なくとも1970年代に韓国が日本の企業に自由貿易地帯として開放し、経済飛躍を成し遂げた慶尚南道の馬山、全羅南道の麗水を模擬していることは間違いないようだ。

 羅先経済特区は東北3省開発(長吉図開放先導区事業)に全力を挙げる中国と極東シベリア開発を急ぐロシアとタイアップしており、これに北朝鮮との間で海運協定を結び、昨年4月には羅先市との間で道路、運輸、建設などの経済貿易協定を結んだ、海のないモンゴル、そして将来は南北縦断鉄道の開通による東海経済圏構想を夢見る韓国が加わることになれば、北朝鮮が夢見る「第二のシンガポール」は無理だとしても、国際物流港として知られる釜山港のような一大国際中継貨物拠点、輸出加工基地が誕生する可能性はあると、説明した。

 羅先港が注目されるのは、地理的な条件に加えて、冬でも凍結することのない不凍港であることだ。

 従って、中露を繋ぐ道路や鉄道など周辺のインフラが整備され、完成した暁には黒龍江省、吉林省、遼寧省の中国3省から羅津港に流入する物流量だけでも263万コンテナに上るし、国際貿易中継基地としてフル稼働することになれば、韓国の現代経済研究院の最新報告書「羅先特別市開発展望と示唆点」によると、北朝鮮は港湾使用料だけで、年間4億3千万ドルが手に入るとのことだ。簡単な話、これだけの外貨が手に入れば、慢性的な食糧不足問題も一気に解決するという計算になる。

 韓国が世界第2位の経済大国を背にして「漢江の奇跡」を果たしたように北朝鮮もまた、今や世界第2位の経済大国にのし上がった、中国をスポンサーに経済再建を目指すということだ。

 北朝鮮の狙いが成功するか、失敗するかは、今後の推移を見守るほかないが、羅先の自由貿易地帯開発は、新潟など日本海に面した都市を軸として環日本海経済圏構想を夢見ていた日本が1990年代に力を入れていた構想である。