2008年5月25日(日)

李明博大統領ファィル

 李明博大統領は2007年12月19日の大統領選挙で11,492,389票(得票率48.7%)を獲得。2位の候補(6,174、681=26.1%)にダブルスコアーで圧勝。

 1.経歴

 1941年 大坂生まれ(4男3女の7人兄弟の5番目)

 大坂平野区加美町福井戸町で生まれる。

 1945年 10月名古屋から密航船で韓国に帰国

 1965年 高麗大学商学大卒。

 1965年 日韓条約反対闘争(懲役6ヶ月服役)

 1965年 現代建設入社。現代建設は当時職員96人の中小企業だった。

 1977年 現代建設社長(36歳)「鄭周永がいなければ李明博もいない」

 1988年 現代建設会長(47歳)

 1992年 国会議員(全国)大統領選挙に出馬した鄭周永と決別

 1995年 ソウル市長選落選

 1996年 国会議員地方区(ソウル政治1番地)相手はノ・ムヒョウン候補

 1998年 国会議員辞職して米国へ(選挙参謀による不透明な選挙資金関連)

 1999年 帰国して、インターネットバンキング事業に関わる。

 2002年 ソウル市長当選(3度目の挑戦で)

 2.人物評

 李氏は36歳で社長に就任、。創業者の一族で系列企業のトップを占める韓国にあっては奇跡の昇進である。その後、政界に転出。2期勤め、ソウル市長に。韓国のサラリーマンの間では「伝説の出世頭」とその名を轟かせたのは、ソウル市長時代に成し遂げた首都改造である。

 ソウルの中心部を流れるどぶ川として悪名高かった清渓川(西から東に流れる全長km)を市民の憩いのオアシスにするため大胆にも川の上を一日17万台の車が走る高架道路を取っ払い、魚と鳥が舞い戻る川に復元させたのだ。それも、6年の工事期限を僅か2年で、予算も当初よりも3分の1でやり遂げたのである。

 東京でも首都高速道路を撤去し、日本橋に再び青空を取り戻そうとの動きがあるが、未だに掛け声だけで実践できないでいる。そんな日本への著者の「経済的な効率ばかり計算する時代は終わった。開発と環境破壊の象徴である高架道路一つ取り外すことができない国が何で先進国か」との一言は痛烈である。

 歴代大統領とは違って唯一経済畑出身のこの大統領候補のモットは「1%の可能性があれば、チャレンジする」である。不可能に挑戦し、それを可能にさせる人物が今まさに隣の国の大統領になろうとしている。

 3、対日姿勢

 ・日韓併合時代に建てられた現ソウル市長を韓国旗で覆うイベント開催

 ・歴史教科書採択阻止のため寄付金1億3千2百万ウォンを集める

 ・日本の修学旅行生を誘致して竹島問題などを勉強させることを計画

 ・石原都知事を「四流・五流の政治家」と批判

 ・2006年1月のダボス会議で「一部アジアの政治指導者は、過去の歴史に縛られて、国家間の緊張を高め、未来を暗くしている」とノ・ムヒョウン大統領を批判する発言。与党・ウリ党から「親日的」と批判される。

 ・「経済大国の日本の戦後処理はドイツのそれと比べてけち臭い」と発言。その一方で、安倍総理と会談(2006年11月)した際に「韓国国民の3大懸案(歴史・竹島・靖国参拝)を未来志向的な解決に向け、積極的な協力をお願いしたい」と要請。

 ▲対日発言(4月20日 在日韓国人らの歓迎レセプションで)

 「私は日本に対してしょっちゅう謝れとは言わない。(日本が)心からの謝罪こそが本当の謝罪で、いやいやながらの謝罪は謝罪ではない。(過去の歴史認識問題について)遠くない歴史において心が傷ついたことがあったが過去に傷ついたことでもって未来は生きられない。過去は忘れることはできないが、過去にこだわっては今日は生きられないし、まして未来を生きることはできない。過去の政府と異なり、日本に対して他の要求はないが、経済協力を実質的に一層強化するつもりだ。日本経済人と会って、韓国企業との合作や進出について論じるつもりだ」

 5月19日

 竹島(独島)問題で

 「日本側に速やかに問い質し、事実ならば是正を強く要求するように」

 在日の参政権問題について

 「ここには日本に来たくて来た人もいるが、仕方なく来た人もいる。難しい状況のなか、堂々と韓国人として暮らしてきた。ならば、そろそろ地方参政権を与えるべきだ。韓国では永住権を手にすれば、3年以内に選挙が出来るよう国際社会の規範に合った法をつくった。近い将来、日本も参考にすべきだ」

 拉致問題について

 「原則的に質すならば6者会談で核を放棄させることと日本人拉致問題は別個だ。いっぺんでどうこうすることができないが、南北、北日関係を解決するうえで努力したい」

 4.支持率

 1月=81.3%

 2月=72.9%(15日)南大門=崇礼門火災と国民募金呼びかけ発言

 ※国宝第1号で、復元には4年かかる

 3月=53.3% 党内公選をめぐる脱党問題

 5月=25.4%(ノ・ムヒョン政権末期の27.9%を下回る)

 5.人気急落の原因

 @人事ミス

 3人の辞退に繋がった閣僚人事(統一部長官、環境部長官、女性部長官の人選ミス、4月総選挙に向けての党公認をめぐるハンナラ党の内紛、さらに、総理、外相、国防相、統一相の主要ポストに金大中政権―盧武鉉政権に仕えていた人物らを再起用したことへの保守派の不満や、大統領就任から1ヶ月間、南北対話が全く稼動しないことへの革新系の批判なども支持率下落の要因となっている。

 A金持ち内閣への批判(成金内閣と野党は批判)

 現政権の上級公職者(長官、次官、大統領府首席など1級以上の公務員)103人の財産(本人と配偶者)が一人当たり平均22億8千万ウォン(2億3千8百万円)

 首相を含む閣僚16人の財産は31億3千8百万ウォン。多くの閣僚が江南に不動産を所有。

 ※前のノ・ムヒョウン政権は平均11億8千万ウォンだった。

 B経済目標の修正

 「私はこれから10年を見据えて経済計画を考えている。7%経済成長ができるよう準備する。そのために外国企業が国内に入れるよう努力する」と発言。

 経済成長率を公約の7%から5%台への下方修正、ウォン安によるインフレなども災い。

 政府が、4月28日今年は経済成長率6%達成が非常に難しく、新規雇用創出規模も当面は20万人前後(公約は300万人)にとどまるとの予測を示した。 主要機関が今年の成長率を4%台初めまたは中盤に下方修正するなど、当初目標としていた6%成長の達成は難しい状態だと評価している。

 経常収支は原油高のほか3月と4月に海外への配当金支払いなど悪化要因があるため当面は赤字が続き、年間では100億ドルの赤字が見込まれる。新規雇用も景気的要因と労働市場の構造的要因により当面は20万人程度にとどまり、年間の増加規模も昨年の28万人を大きく下回ると予測される。

 ▲ 経済に関する李明博大統領の発言

 「すぐに成果が現われはしないだろうが最低1年後からは韓国経済が良くなっているという希望を与えることができる」(5月16日、第1回貿易投資振興会議)

 「私はこれから10年を見据えて経済計画を考えている。7%経済成長ができるよう準備する。その為に外国企業が国内に入ってくるよう努力する」

 ▲大運河構想

  ※漢江―洛東江(京釜運河)までを結ぶ540kmで09年2月着工、12年完成予定

 「朝鮮半島大運河のプロジェクトは単純な選挙公約ではない。これは、様々な内陸開発プロジェクトに対するイッシュとみている。大運河はこれらすべての事案を扱う包括的な計画である」と発言。

 C米国産牛肉輸入問題

 米議会は韓米FTAの批准同意について、2003年に米国で牛海綿状脳症(BSE)が発生してから、また07年秋に再び輸入された肉から危険部位が見つかった以降、韓国が検疫を中断して事実上輸入を全面的に中断していた米国産牛肉の輸入を、韓国が完全開放すべきと主張してきた。特に昨年5月に国際獣疫事務局(OIE)が米国を管理(コントロール)されたBSEリスク管理国と認め、米国産牛肉にBSEリスクがないと判断したにもかかわらず、韓国が米国産牛肉の全面開放を遅らせていると不満を表出させていた。

 ・李大統領は米韓首脳会談前日の4月18日、「生後30カ月以下で骨などを除く」とした米牛肉輸入制限を段階的に撤廃する米韓合意を受け入れた。

 ・李大統領は5月2日、経済が徐々に苦しくなっているが、米韓自由貿易協定(FTA)批准案を通過させ、経済活力につなげなければならないとの認識を示し、米韓FTA批准案を5月の臨時国会で処理することを改めて求めた。

 李大統領にハンナラ党の姜代表は「今回の臨時国会で最も重要なのが韓米FTA案件だ。努力したい」と答えた。また、韓米FTAが韓米牛肉交渉とも合わさっており、近くFTAと牛肉交渉について政府と話し合うと明らかにした。

 ・李明博大統領は5月2日、最近の米国産牛肉の全面輸入再開に伴う狂牛病リスクをめぐる議論と関連し、「さまざまな状況を見ると、望ましくないことがある」との考えを示した。

 青瓦台(大統領府)で行われた全国16市・道知事会議で述べたもので、「牛肉を初めて開放するわけでもなく、以前開放して中断したのを再開するというのに、初めてのことのような印象を与えている」とした上で、このように述べた。韓国は十分に競争力のある対策を立てるべきだとし、条件付きで牛肉輸入を禁止したが、その条件が完成したため輸入を再開するのだと重ねて強調した。

 ・政府は5月8日、「米国でBSEが発生したら、輸入を中断する」と安全対策を発表した。

 ・米国産の骨付きカルビの輸入解禁を5月15日に控え5月9日、ソウル市中心部で3万人以上が集う反対集会が開かれた。韓国政府は牛海綿状脳症(BSE)の安全対策を8日に発表したばかりだが、李明博政権への国民不信はむしろ高まった。

 ※反対集会は今月初めから1万人規模で続いていたが、5月31日には10万人と最大規模。これまでは反対派市民の個人サイトで呼びかけ合ってきたが、1500余りの市民団体が「国民緊急対策会議」を発足させ、畜産農家らも多数参加した。

 ・李明博大統領は5月20日、米国産牛肉の輸入再開問題に関し、「輸入業者が30カ月以上の牛肉輸入をしないと自発的に決議した」と述べ、全面的に輸入が再開されても、BSE(牛海綿状脳症)の危険性が指摘される月齢30カ月以上の輸入は実質的に困難との見方を示した。しかし、国民の批判に押され、6月3日、「生後30か月以上の牛肉」について韓国への輸出を禁止するよう要請した。米韓合意を反故にし、事実上再交渉を求めるものとなった。

 李大統領は5月20日、牛肉問題の韓米追加協議の内容について触れ、「野党と国民の懸念を相当部分解決できる事実上の再交渉に準ずるもの」だと説明した。特に、月齢30か月以上の牛肉の輸入は実質的に行われないはずで、輸入業者側も30か月以上の牛肉は輸入しないと自主的に決議していると強調した。また、現在も米国との牛肉交渉を行っている日本、台湾とのバランスの問題もなく、万一そうしたことが生じれば修正・補完を要求すると述べた。

 一方、孫代表は、月齢30か月以上の牛肉の輸入禁止だけでなく、30か月未満の牛肉も牛海綿状脳症(BSE)特定危険部位(SRM)を含むものは輸入してはならないと主張し、米国内の食肉処理施設に対する徹底した監視・監督の必要性を提起した。

 ▲駐韓米軍と作戦権移譲問題

 国会は12月22日、本会議を開き、「イラク駐屯国軍部隊の派遣延長同意案及び縮小計画」を議決した。 国会は同意案をめぐる表決を行い、在席議員190人のうち賛成114票、反対60票、棄権16票で可決した。

 同意案は、現在2300人規模のザイトゥーン部隊を来年4月までに1200人規模に縮小する一方、派兵を1年間延長し、来年中に「任務終結」計画を立てることを明示している。

 ▲在韓米軍(2008年5月現在、2万8千人)のベル司令官は4月3日、「職業軍人として戦時作戦統制権の移譲と関連した再検討が断行されないことを望む」との考えを示した。ソウル・世宗文化会館で開催された極東フォーラム第13回セミナーでの講演後、「韓米政府は戦時作戦統制権の移譲に対し再検討できるか」との質問に答えたもの。

 ベル司令官は、「大韓民国は自国の防衛のための卓越した能力を保有しており、米国は信頼できる友邦として隣りにいるだろう」と述べ、戦時作戦統制権が移譲された後も韓米同盟の戦争遂行能力には支障がないと確信を持って言えると強調した。また、韓米同盟の礎となった韓米相互防衛条約には指揮統制権に対する言及がなく、太平洋で状況が発生すれば韓米両国が互いに防衛を保障すると記されているだけであり、戦時作戦統制権の移譲後に指揮管理体制に対する新たな指針が示されるだろうと説明した。

 キーティング米太平洋軍司令官が、戦時作戦統制権を2012年4月に米軍から韓国軍に移譲した以降も、在韓米軍2万5000〜2万8000人は継続して朝鮮半島に駐留すると明らかにした。アジア・ソサエティ主催の講演で、在韓米軍駐留規模について質問を受け「韓国が2012年4月の作戦統制権移譲に合意したのは重要なこと」とした上でこのように答えた。また、米軍の駐留はアジア太平洋地域の安全保障に向けた中核的な要素となっていると強調した。

 ▲韓国選挙データー

 4月9日に投開票が実施された第18代国会議員総選挙は、与党ハンナラ党が定数299議席のうち過半数を確保する勝利で終わった。これにより、1987年の民主化以降、第17代総選挙に次いで2番目に与党が過半数を占める議会構図となった。

 総選挙結果

 ハンナラ党153議席(比例22議席) (総選挙前=112人)

 親朴連帯  14議席(比例8議席) (総選挙前=3人)

 民主党   81議席(比例15議席) (総選挙前=136人)

 自由先進党 18議席(比例4議席) (総選挙前=9人)

 民主労働党  5議席(比例3議席) (総選挙前=6人)

 創造韓国党  3議席(比例2議席) (総選挙前=1人)

 無所属   25議席        (総選挙前=25人)

 ※ハンナラ党は2006年5月の統一地方選挙での勝利、昨年12月の大統領選の勝利に続き、今回の総選挙でも勝利を収めており、李明博(イ・ミョンバク)政権の国政運営にも弾みがつくことになった。ただ、国会のすべての常任委員会で過半数を占められるほどの議席獲得には失敗しており、また朴槿恵(パク・クネ)元代表派の議員も30議席前後を確保していることから、李大統領が公約としている大運河特別法などの政策推進に影響しそうだ。