2010年6月4日(金)

予想に反した韓国統一地方選挙結果

 韓国の統一地方選挙は、事前の予想に反し、与党ハンナラ党の敗北に終わった。主要16首長選挙のうち、6つしか取れなかったとは、大敗だ。

 「朝(チョ)中(チュン)東(ドン)」と呼ばれる朝鮮日報、中央日報、東亜日報の三大紙の予想では、ハンナラ党の圧勝が予想されていた。それが、この惨敗だ。

 ハンナラ党の敗因について、哨戒艦事件をめぐる李明博政権の強硬な対応が裏目に出たとの見方がある。「北風」が政府与党にとって追い風ではなく、逆風になったということだ。国民の間に安保意識が高まれば、保守の与党に有利に働くものだが、韓国ではその常識が今回は、通用しなかったようだ。

 有権者がこれ以上軍事的緊張が高まれば戦争になりかねないと不安を感じ始めたこと、「コリアクライシス」が現実になれば回復の兆しにあった経済が打撃を受けると憂慮しだしたことが、与党に不利に作用したようだ。当然、哨戒艦事件を選挙に利用しようとしたことへの反発もあったようだ。

 一言で言うと、過去10年間、紆余曲折を辿りながら、2度の南北首脳会談を経て、それなりに成果を上げ、維持されてきた南北関係が完全に遮断され、悪化の一途を辿ったことへの苛立ちや不満が国民の底辺にあったようだ。

 素朴に考えれば、世論の代弁紙であるはずのメディアはこのような国民の意識の変化を十分に予知できたはずだ。にもかかわらず、大手紙を中心に韓国のメディアはこぞって、民意を見誤り、戦時報道にみられるような右並びの世論調査の結果を発表していた。哨戒艦事件の報道では野党の過去の「太陽政策」が原因であるとし、ことさら北朝鮮への対決姿勢を煽る論陣を張り、結果として与党を利するような報道に徹していた。

 日本の選挙でも各党の議席獲得数で新聞の事前予想とは異なる結果が出ることはしばしばあるが、韓国のように180度ひっくり返ることはない。

 赤っ恥をかいた「朝中東」を含め韓国の大手紙は事前の世論調査とは逆の結果が出たことについて「若い世代が投票所に足を運び苦戦を強いられていた野党にこぞって投票したから」と弁明しているが、単なる言い訳に聞こえる。これでは「世論調査の対象から実は若者は除外していた」と言っているようなものだ。