2010年12月30日(木)

李大統領が変身?

 ワシントン・ポストのインターネット版は28日、「米国、攻撃的な韓国に限界」との見出し記事の中で「米政府内に李明博政権が最近強硬な方針に旋回していることに危惧が高まっていることから米国がそろそろ、韓国に対して『金正日政権と対話を再開しろ』と要求する可能性がある」と書いていた。

 どうやら、オバマ政権までもが韓国政府や軍の一連の言動に危惧を抱いていたようだ。

 同紙によると、米国の憂慮はまだ深刻ではないものの、必要以上に攻撃的な韓国は自ら負担を背負うことになりかなねいとオバマ政権内ではみており、パトリック・クローニン新米国安保センター研究員は同紙とのインタビューで「米国の一部官吏の中には李大統領が過剰対応するのではないかと懸念している」とコメントしていた。

 同紙は、ジェームズ・カートライト統合参謀副議長が「韓国の射撃訓練に北朝鮮が打ち返せば、連鎖反応的に応酬に発展し、統制不能になる恐れがある」と懸念を表明したのもこうした米国の危惧の表れである、と記している。

 ワシントン・ポスト紙はまた、西側の消息筋を引用し、「李大統領は来月米国から『北朝鮮と対話しろ』との圧迫に直面することになる」と予想しているが、「こうした米国の要求を受け入れれば、李大統領は優柔不断に見えかねないので、難しい選択を強いられるだろう」と書いていた。

 ところがである。李大統領はワシントン・ポストの記事が出た翌日の29日、国防部による業務報告の場で「国防力を強化し、安保を強固にしながらも、その一方で南北が対話を通じて平和を定着する努力をしなければならない」と語っていた。また、同じ日、外交通商部の業務報告では「来年は6者会談を通じて北朝鮮の核廃棄を実現させなければならない。核廃棄は6者会談を通じてやるが、南北が交渉を通じて核を放棄することに韓国は重要な役割を担わなければならない」と語っていた。韓国の金星煥(キム・ソンファン)外相にいたっては、「いろいろな対話の可能性が開かれている」と、南北首脳会談の可能性も排除しなかったそうだ。

 李大統領はちょっと前まで北朝鮮への懲罰を優先させるべきで、6か国協議は時期尚早という立場で、また南北対話についても「北朝鮮自ら軍事的冒険主義と核を放棄することは期待し難い」と、断念していたばかりだ。

 来年1月19日の米中首脳会談の結果、米国が6か国協議再開に舵を切るかもしれないことから先手を打つ必要性があったのかもしれない。6か国協議から阻害、孤立するのを恐れたのか、それとも、対話拒否の強硬イメージを払拭したいのか、真意はわからないが、李大統領の発言を米国は歓迎している。しかし、韓国の国内保守派からは「優柔不断」と、また野党などからは「右往左往している」と批判されるかもしれない。

 関係国のどこも、また南北の当事者も朝鮮半島の軍事的緊張は望んでないはずだ。ならば、結局は対話に向かうというのは自然の流れである。