2010年5月13日(木)

北朝鮮はこのままではイスラエルを目指す

 北朝鮮は6か国協議に出ても、出なくても良いとの立場で、このまま核開発を続けるだけのこと。時間は決して北朝鮮にとって不利ではないはず。要は6か国協議の遅延は、北朝鮮にいたずらに核開発のための時間を与えるだけに過ぎない。

 核融合反応の成功を報じた労働新聞は「朝鮮の科学者は核融合技術を我々式に開発するための闘争を繰り広げてきた。この過程で、我々式の独特な熱核反応装置を設計、製作し、核融合反応と関連した基礎研究を終えたことで、熱核技術を我々の力で完成できる強力な科学技術力量を蓄えた」と主張していた。

 あくまで平和目的のための技術開発であることを強調しているが、核融合反応は水爆開発につながる。ウランやプルトニウムを原料とした核兵器よりはるかに強力な水素爆弾の製造基幹技術に用いられるからである。現に米国とロシアがこの技術を用い、水素爆弾を製造している。

 北朝鮮の発表について韓国では「根拠が薄い」「国内向けのプロパガンダー」「米国を牽制するためのカモフラージュ」と相手にしていない。

 韓国が冷やかな根拠は、北朝鮮の技術水準が低いこと、また巨額の費用がかかることが理由のようだ。確かに水素爆弾を実験しようとすれば、巨大な装備とより高度の技術も必要となる。

 北朝鮮が44年ぶりに出場する南アフリカW杯のテレビ中継料も満足に払えず、韓国に頼らざるを得ない台所事情を考えれば、納得がいく。食糧もろくに確保できない国が、核融合反応開発のために莫大な費用を捻出するのはあり得ないと思うのは当然だろう。

 世界に誇る展示品が何一つない上海万博の北朝鮮館をみれば、誰もが「北朝鮮はまだまだ」と受け止めるだろう。まして、核実験ですら、二度やってまだ一度も成功していないわけだから、北朝鮮の発表をそのまま鵜呑みにするわけにはいかないだろう。

 しかし、振り返ってみると、北朝鮮はこと、核とミサイルに限っては、有言実行の国である。予告したことは必ずと言っていいほど実行に移してきた。

 北朝鮮が1993年にノドン・ミサイルを発射実験した時の日本の反応はまるで「水鉄砲」を撃ったかのように意に介さなかった。日本を狙うにはほど遠いと。ところが、それから5年後の1998年に北朝鮮のミサイルは日本列島を飛び越えてきた。未曾有の飢饉で、数百万人の餓死者が発生してからまだ2年も経ってなかった時にである。昨年のテポドン2号はさらに飛距離を伸ばし太平洋に着弾した。ペンタゴンは「米大陸着弾は目前にある」と警戒する有様だ。

 北朝鮮の核保有も当初は、「ハッタリ」と疑っていた。今と全く同じ理由からだ。ところが、北朝鮮が2006年に本当に核実験を強行して、国際社会は「持っていたのか」と騒然とした。

 根拠なき、楽観論は禁物だ。北朝鮮はこのままで、核を絶対に手放そうとはしないイスラエルの道を目指そうとしているのかもしれない。

 イスラエルは四方八方、敵に囲まれても、核兵器を含む圧倒的な軍事力と米国の全面的なサポートの賜物で崩壊せず、存続してきた。北朝鮮も同様に大量破壊兵器と大国・中国のサポートをバックにイスラエルと同じ道を辿れば、これは日韓両国にとって悪夢だ。

 今のうちに止めなければ、本当に手遅れとなるだろう。