2009年11月4日(水)

使用済み燃料棒8千本から核爆弾は1個か、5個か

 昨日、朝鮮中央通信は北朝鮮が8月末までに使用済み核燃料棒8千本の再処理を「成功裏に終えた」と発表していた。予想されたことだ。

 抽出したプルトニウムが何に使われるのかは議論するまでもない。北朝鮮は国連安保理がミサイル発射非難決議を4月25日に採択したその日に使用済み核燃料棒の再処理開始を宣言し、1ヵ月後の5月25日の核実験への制裁決議では「プルトニウムの兵器化」を公言していた。9月3日の国連安保理議長宛の書簡で「抽出したプルトニウムが武器化されている」と述べていた。こうした北朝鮮の言動から抽出されたプルトニウムが核爆弾用であることは明らかだ。

 今朝の新聞には使用済み燃料棒8千本が再処理されれば、「北朝鮮は核爆弾1個分に相当するプルトニウム6〜8kgを得たことになる」(読売新聞)と、伝えられていた。本当に8千本からは6〜8kgしか程度しか得られないのだろうか?そうだとすれば、6年前の発表は間違いということになる。

 北朝鮮は確か、2003年にも今と同じように使用済核燃料棒8千本を再処理していた。当時、日米韓のメディアは一斉に「新たに25〜30kg程度(5個に相当)のプルトニウムを手にした」と伝えていた。同じ本数を再処理しているのに、この違いをどう理解すれば良いのだろうか。

 ブッシュ政権下での6か国協議で核問題が進展しなかった理由の一つにプルトニウムの申告量をめぐる対立があったのは周知の事実だ。北朝鮮はプルトニウム量を38〜44キログラムと米国に申告した。これに対して米国は北朝鮮がこれまでに3段階の再処理を得て50キロ以上のプルトニウムを所持もしくは、それに相応する数の核爆弾を保有しているとみなしていた。

 米国が挙げた50kg以上の根拠は、クリントン政権下での94年のジュネーブ合意までの間の10kg、ブッシュ政権登場後の2003年の8千本の使用済燃料棒からの25〜30kg、そして2003年2月から核施設の稼動が停止されるまでの2006年10月までの3年8か月間の18〜20kgである。米国の根拠は、当然8千本から25〜30kgのプルトニウム抽出が前提となっている。

 北朝鮮がこれらすべてを核爆弾化させているならば8個前後の核爆弾を手にしたことになる。仮に今回、8千本から1個でなく、5個ということになれば、北朝鮮は二桁の核爆弾を手にすることになる。事態は深刻だ。

 米国は北朝鮮を核保有国とみなさないとの立場だ。日本も、韓国も、また中ロを含む国際社会も同様だ。しかし、このまま核開発を放置すれば、核爆弾の数はさらに増え、国際社会が認めまいが、北朝鮮は「第2のインド」、「第2のパキスタン」となりかねない。今ここで止めなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 「北朝鮮が6か国協議に出て、核廃棄を約束しない限り、国連の制裁を強化する」との立場の米国に北朝鮮は「米朝2者協議に応じて、敵対政策を放棄しない限り、核抑止力を強化する」と応酬している。