2011年12月13日(水)

頭の痛い中国の不法操業

 中国漁船船長らによる韓国海洋警備官への殺傷事件に韓国は国を挙げて怒っている。しかし、こうした事件は起こるべきして起きた。

 一つに、中国漁船の不法操業は今に始まったことではない。調べてみると、過去4年間で拿捕した漁船の数だけで1,677隻である。年平均すると527隻である。

 また拘束した船員の数は527人、これまた年平均すると130人である。今年も11月現在すでに439隻を拿捕している。そして、拿捕の過程でこれまでに警備官2人が死亡し、負傷者も28人も出ている。

 次に韓国の法的処分が実に甘いことも後を絶たない理由の一つだ。

 今の韓国の法律では身柄を拘束しても、罰金さえ払えば直ぐに釈放される。罰金は4000万ウォン(266万円)から上限で7000万ウォン(466万円)だが、一度の出漁で2億から3億ウォンを稼ぐので罰金を払っても余りあまる。罰金刑を5000万ウォンから1億ウォンに上げてみても効き目がなかった。

 さらに中国側にいくら取締りを要求しても、そもそも不法操業の漁船の多くは中国当局に登録されていないため手の施しようがないのが実情だ。

 韓国は自国の排他的経済水域(EZZ)で操業可能な中国漁船の数を1700隻と限定している。ところが、実際に韓国の領海に入って不法操業している船の数はその約9倍の15000隻に上る。

 その多くが登録されてないため中国当局の追跡には限界があるようだ。従って、昨年7月以降、韓国海上警備艇が不法操業中の韓国漁船の証拠写真を中国側に電送しても、中国は全く対処しきれてないのが現実だ。

 もう一つは、中国に対して弱腰であることだ。中国とはトラブルを起こしたくないとする外交配慮が原因だ。

 韓国海上警備のマニュアルでは、警備官は拳銃と小銃の所持を認められ、身に危険が迫った場合は使用も認められている。しかし、中国との外交摩擦を恐れて、これまでに実際に使用されたためしがない。それもこれも年々急増する対中貿易が韓国経済成長の生命線であること、そして北朝鮮の核問題や脱北者問題で中国に協力を要請している立場であることなどがその要因だ。

 韓国は今後の対応策として海上警備官の人員を増やし、装備も充実させるだけでなく不法操業行為を刑事処罰できるよう法を整備することにしている。

 また、外交的にも強力に対処するとの方針を打ち出している。中国が善処しなければ、来年1月の李明博大統領の訪中を取りやめる覚悟であると、韓国のメディアは伝えているが、延期はあっても、中止はできないだろう。韓国は中国に足元を見られているからだ。

 中国の不法操業には日本も手を焼いている。また、中国とは同盟国の北朝鮮もまた立場はおそらく同じだろう。

 1999年と2002年に2度起きた黄海銃撃戦も元を正せば、北朝鮮の警備艇が不法操業の中国漁船を深追いする最中で起きている。

 偏西風のため毎年多大な迷惑を被っている黄砂同様に中国漁船の不法操業も日本と南北朝鮮が共同対応しなければならない問題であり、日韓中FTAよりも不法操業に関する協議が優先である。