2013年1月31日(木)

中国に北朝鮮の核実験を止められるか!

 北朝鮮の核実験は「もうどうにも止まらない」のか?

 クリントン米国務長官は「金正恩(党第一書記)には失望したが、それでもまだ希望を抱いている」と、僅かながらも中国による「最後の説得」に期待を寄せる発言をしていた。

 静岡で開催中の国連軍縮会議に出席するため来日したアンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表も「北朝鮮と特別な関係にある中国が、積極的な役割を果たすことを期待している」と、これまた中国に期待を掛けている。日本も、そして韓国も同様に北朝鮮への中国の影響力を期待している。

 その中国だが、北朝鮮の核実験には反対している。中国外務省は北朝鮮に対して再三にわたって「冷静さを保ち、言行を慎んで、情勢がエスカレートするような措置を取らないよう希望している」と自制を促している。

 外交ルートを通じた説得だけでなく、官製メディアを通じた北朝鮮への牽制も忘れてない。

 「北朝鮮が核実験を実施すれば、中国は迷わず北朝鮮への援助を減らす」との「環球時報」がその例だ。中国の牽制が本気であることを示すため中国税関が丹東、大連をはじめとする中朝国境に近い主要貿易窓口で最近通関検査を大幅に強化したとの報道もある。

 中国が反対する理由は@制裁決議を採択した国連常任安保理事国としての責務があるA北の核実験を理由にアジアにおける米国の軍事力が増強する恐れがあるB日本、台湾、韓国で核武装論の台頭し、軍拡を引き起こす懸念があるC朝鮮半島の緊張が高まれば朝鮮半島の安定と平和、引いては中国の安定と繁栄が損なわれるとの中国なりの戦略的な国益に基づく。換言すれば、北朝鮮が衛星と主張する発射も、核実験も、中国の国家利益に相反するということに尽きる。

 中国はこれまで北朝鮮によるミサイル(衛星)発射も、核実験も同じ理由から反対してきた。そして、北朝鮮が中国の説得を振り切って強行すれば、その都度安保理では拒否権を発動せず、制裁決議に賛同してきた。

 国際社会から北朝鮮への影響力の行使を期待されている中国としては今回こそは、大国の威信と面子を掛けてでも北朝鮮の核実験を制止する考えのようだ。

 問題は、北朝鮮が中国の説得を聞き入れるかどうかだ。

 北朝鮮は1回目の2006年の時は「干渉を受け入れ、他人の指揮棒によって動けば、自主権を持った国とは言えない。真の独立国家とは言えない」(労働新聞)とミサイルも核実験も強行した。

 中国も同調した国連制裁決議「1874」が採択された時は、「大国がやっていることを小国はやってはならないとする大国主義的見解、小国は大国に無条件服従すべきとの支配主義的論理を認めないし、受け入れないのが我が人民だ」(労働新聞)と、中国への不満を露骨に表明した。

 中国が07年1月にミャンマ政権の人権非難決議には7年ぶりに拒否権を発動したにもかかわらず、伝統的友好国の北朝鮮に対しては拒否権を発動しなかったことに背信感を抱いたようで、中国を「米国にへつらっている」と罵った。

 中国と北朝鮮との間には日米安保条約のような友好条約がある。1961年に交わされた中朝友好条約には「相手方に反対、敵対するいかなる団体や行動、措置には加わらない」とする一条がある。北朝鮮が中国に反発するのは、国連安保理の対北非難声明や制裁決議への中国の賛同はこの友好条約に反するとみなしているからである。

 昨年4月のミサイル(衛星)発射で安保理議長声明が出された時は「深刻なのは、常任理事国が公正性からかけ離れ、絶え間ない核脅威恐喝と敵視政策で朝鮮半島核問題を作った張本人である米国の罪悪については見て見ぬふりして、米国の強盗的要求を一方的に後押ししていることだ」と不満を露わし、「最も多く核兵器を持っている安保理理事国が他国の核問題を論じる道徳的資格もない」名指しこそ避けたものの中国を間接的に批判した。

 そして、今回の制裁決議では「間違っていることを知りながら、それを正そうとする勇気も責任感もなく、誤った行動を繰り返すことこそが、自身も他人も騙す臆病者の卑劣なやり方」(23日の外務省声明)と糾弾し、24日の国防委員会の声明では「米国への盲従で体質化された安保理事国らがかかしのように(決議賛成)に手を挙げた」と中国を「米国のかかし」とまで言い放った。

 極めつけは、「核実験は民心で、他に選択はない」とする1月25日の労働新聞の「正論」での対中批判である。明らかに中国を指していると思われる箇所が随所にあった。幾つか挙げると、

 「世界の公正な秩序に先頭に立たなければならない国々が米国の専横と強権に尻込みし、初歩的な原則もかなぐり捨ててしまった」

 「一国の自主権を強奪する非合法的な決議案に賛成の手を挙げた国々は自分らの行動が何を意味しているのかも知らないでいる」

 「これら国々は、最初からボタンを掛け間違えた。間違えたなら、ボタンを掛け直せば済むことだ。しかし、愚かなこれら国々は、最初のボタンを掛け間違えたまま服が歪もが、最後のボタンもそのように掛けざるを得ない悲惨な姿をさらけだしている」

  「今回、我が国に対する国連安保理事会の決議案に賛成した国々に聞きたい。我々に対する圧力はいつの日か、自分の首を絞める結果をもたらすことになるだろう」

 「我々をだしに米国との難題を取引できると考えていれば、大きな誤算である」

 そして、最後に「自主権は国家と民族の命だ。自主権を失った国家と民族は生きていても、死んだも同然だ」と結び、26日の金正恩最高司令官の「強度の高い国家的重大措置を取る断固たる決心をした」の発言に繋がっている。

 果たして中国に止められるだろうか?