2010年10月20日(水)

北朝鮮に中国軍が駐屯する日

 昨日から講演で新潟に行っていた。新潟県新井市商工会議所主催の講演で「日本を取り巻く国際情勢」を演題にホットな問題となっている日中関係、さらには新潟なので拉致問題を中心に日朝関係の展望などについて1時間半話してきた。

 当日は、宿泊することになっていたので、講演後の懇親会にも出席。お酒が入ったことで大いに盛り上がった。

 今朝、8時44分発の信越線に乗り、長野を経由して新幹線で帰京した。

 車中、駅の売店で購入した地元紙、新潟日報など新聞を丹念に見ていたが、読売新聞の国際面に掲載された中国共産党中央委員会のひな壇の写真が目に入った。

 中国も北朝鮮同様に前列に政治局常務委員(9人)が勢揃いしていたが、序列No.1の胡錦濤主席を真ん中にNo.2の呉邦国全人代委員長が右隣、No.3の温家宝総理が左隣に座り、以下No.4,No.5の政治局常務委員が左右交互に座り、そして後継者に決まった習近平国家副主席が向かって右側、胡主席から二人挟んで座っていた。序列6位であった。

 後継者の扱いは中国も北朝鮮と全く同じだった。44年ぶりに開かれた党代表者会で金正日総書記の後継者に決まったも同然の三男の金正恩(キム・ジョンウン)氏は習副主席とは異なり政治局常務委員ではないものの、序列では6位だった。党代表者会のひな壇では序列3位の趙明録(チョ・ミョンノク)軍総政治局長が病気欠席していたため一つ繰り上がり、5番目に着席していたが、正式な序列は習氏同様に6番目である。

 正恩氏は党軍事委員会副委員長に就任したことで後継者に決定付けられたが、習近平氏も同様に共産党中央軍事委員会副主席に就任したことで決め手となった。両国とも軍を掌握できずして、指導者にはなれないということのようだ。

 後継者に決まった二人を比較すると、恰幅の良さだけでなく、習副主席の妻は歌手、正恩氏の新妻は踊り子と、女性の趣味も似ている。

 唯一の違いは、正恩氏は党政治局常務委員及び国家副主席のポストに就いていないこと、そして年齢が27歳に57歳と、30歳も離れていることだ。

 胡主席と金総書記は68歳と同じ年だったが、次の指導者は、息子と父親ぐらいの年齢差がある。中朝関係は同等の関係から、大きく豹変し、中国が保護者として面倒をみることになる大人と子供の関係に替わっていくような気がしてならない。

 昨日の新潟での講演会のみならず、最近の講演では、経済面だけでなく、このままでは北朝鮮は中国に政治的にも、軍事的にも従属されかねないと危惧を表明していたが、今朝の韓国紙、朝鮮日報の報道によると、中国が北朝鮮の首都、平壌郊外に人民解放軍を駐屯させる動きがあるとのことだ。事実ならば、日本にとって深刻な事態だ。

 日本が北朝鮮を唯一評価できるものがあるとすれば、それは、北朝鮮が中国軍を駐屯させない、中国に基地を貸さないことだ。北朝鮮は政治、軍事だけは、自主独立の道を歩んできたはずなのに、どうやら軍事的にも中国に身を委ねるようだ。今年2度の金正日訪中から、もしかしたらと思っていたが、どうやら危惧が的中しそうだ。

 兵力は2千から3千人とのことだが、「日本海に出口のない中国がそのうち日本海に面した羅先、清津、元山の港湾も軍港として使うような事態になれば、中国との間で尖閣諸島や資源紛争を抱える日本の安全保障にとって極めて深刻な問題である」と警告してきたが、このまま放置すれば、その時が現実に来るかもしれない。

 昨日の講演では「日本は安全保障と資源外交という二つの国益の観点から、外交懸案である拉致問題の早期解決を図り、地政学的、戦略的な見地から北朝鮮を中国から引き離し、取り込む必要がある」と力説したが、急がなければ、本当に困った事態になりかねない。