2010年2月17日(水)

金訪中か、胡訪朝か、中朝の綱引き

 金総書記の健康を占うバロメーターは外遊できるかどうかだろう。早ければ来月にも中国を訪問するのではないかと言われている。訪中すれば、4年ぶりである。

 過去の例をみるまでもなく、列車で移動する。北京訪問後、地方も視察するため一週間ぐらいの日程を組むことになる。列車に揺られる長旅に耐えられるのかどうか、それである程度、現状がわかるだろう。

 また、これまで金総書記の活動は国内に限定され、写真も映像も検閲を受け、配信されていた。外遊となると、外部の目にさらされるわけだから、客観的に健康状態をチェックできる。

 北朝鮮は今年の新年の社説で「今年を繁栄の年にしなくてはならない」と強調し、そのために「人民生活の向上に集中する」ことを国民に約束していた。

 昨年12月に施行した紙幣改革、デノミはそのための政策だったが、それが失敗し、逆に経済混乱を招いたとなると、国内の混乱を収拾し、民心を安定させるにはやはり、経済的スポンサーである中国に援助を頼ざるを得ないだろう。

 訪中となると、もちろん手ぶらでは行けない。手土産なくして、中国からの援助は期待できない。となると、その手土産がおそらく6か国協議への復帰ではなかろうか。

 北朝鮮の6か国協議代表でもある金桂寛次官が先週(9日)訪中し、中国側のパートナーである武大偉朝鮮半島事務特別代表と協議したのも、6か国協議復帰に向けての動きである。伝えられるように金次官の3月訪米が実現すれば、6か国協議再開への道が開かれるだろう。

 金次官の訪米と、金総書紀の訪中のどちらが先になるのか、何とも言えないが、北朝鮮側は昨年までは「胡錦濤主席の訪朝が先である」との理由から金総書紀の訪中に積極的でなかったようだ。

 確かに調べてみると、北朝鮮は昨年3月に訪中した金英逸首相を通じて「適切な時期に訪問してもらいたい」と胡錦濤主席の訪朝を正式に要請していた。

 中国はその1ヶ月後の4月に訪朝した王家瑞対外連絡部長を通じて「都合の良い時期に訪中していただきたい」と逆提案していたが、北朝鮮は10月訪朝した崔泰福最高人民会議議長が胡主席と会談した際に金総書記からのメッセージを伝え、再度胡主席の訪朝を要請していた。

 胡主席は2005年10月以来訪朝していない。一方の金総書記は翌年の06年1月に答礼訪問している。2000年に入って4度も訪中している。

 シャトル外交、首脳外交の原則からいくと、今度は胡主席の訪朝の番となるが、北朝鮮の現状からすれば、いつまでも待っていられないということかもしれない。

 中朝の綱引きは、どうやら中国に軍配が上がりそうだ。