2011年9月5日(月)

「ライス訪朝計画」は本当にあった!

 ブッシュ政権時代のチェイニー副大統領が回顧録で「ライス国務長官が2008年に北朝鮮を訪れ、金正日(総書記)と会談する計画を立てていた」と暴露していた。

 当時、北朝鮮核開発の象徴である原子炉の冷却塔が爆破された。冷却塔爆破の北朝鮮の狙いについていろいろ憶測されていたが、この爆破は、北朝鮮が米国に打診したのもではなく、逆に米国の働きかけが功を奏して実現したものである。従って、北朝鮮のイニシアチブによるものではなく、米国による演出と言える。北朝鮮国内では知らせず、米国、日本、韓国のテレビを招いて、爆破シーンを世界に向けて放映させたことからもそのことは明らかだった。

 核施設の解体の一環である冷却塔の爆破は、元来第二段階での約束事項ではなく、次の段階(第三段階)での北朝鮮の義務事項だった。金総書記がそれを早めて承諾したのは、今年2月にニューヨーク・フィルハーモニックの平壌公演を実現させてくれたことへの『恩返し』のようでもある。

 テロ支援国指定が解除されれば、次は平和協定か、国交正常化のどちらかだ。しかし、いずれも米朝間で信頼関係が醸成しない限り、実現は困難。信頼関係とは、北朝鮮が「反米」をやめること、米国が北朝鮮を『敵国』扱いしないことである。

 その意味では金総書記の「国交が結ばれれば、我々は韓国以上に親米になる」とのオフレコ発言と、ライス国務長官の最近の「米国には永遠の敵はいない」との発言は注目される。 クリントン政権最後の年の2000年10月、オルブライト国務長官が訪朝したように次は、ライス国務長官の電撃訪朝があったとしても不思議ではない。

 いずれにせよ、ライス国務長官の訪朝は不発に終わったものの、重要なことは、政権発足(2002年1月)直後から北朝鮮を「悪の枢軸」と非難し、金総書記を「取るに足らない男で、食卓で行儀悪く振舞うガキのようだ」と酷評し、2005年4月には「金正日のような暴君による暴政を終息させる」と表明していたブッシュ大統領でさえも2006年11月に「北朝鮮が核兵器を廃棄する場合、朝鮮半島の平和体制構築に向け金正日総書記と朝鮮戦争の終結を宣言する文書に共同署名する用意がある」(2006年11月)と言明し、任期最後の年にはライス国務長官の訪朝を検討していたという歴然たる事実だ。