2011年8月19日(金)

北朝鮮が米朝首脳会談を提案

 先月の金桂寛外務第一次官の訪米に伴うボズワース北朝鮮政策特別代表との米朝高官会談でのやりとりの一部が漏れ伝わってきた。

 米朝双方とも会談後「実務的で、建設的な話し合いが行われた」と述べ、詳細については一切口を閉ざしたままだ。しかし、昨日発売された韓国の理論誌「創作と批評」に掲載された李明博政権への延世大のムン・ジョンイン教授の提言によると、金桂寛第一次官はボズワース特別代表に対して オバマ―金正日による米朝首脳会談を提案したそうだ。

 ムン教授は、米国の消息筋の話として、北朝鮮は米国との無条件の対話と関係改善を希望し、「交渉を単純化し、時間を短縮するためにも最高級当局者会談をやろう」と提案したそうだ。

 金外務第一次官は、米国が求めている3度目の核実験とミサイル発射実験については「米国が制裁を緩和し、食糧支援を再開してもらえればモラトリアム(中断)措置を取る用意がある」と表明したそうだが、米朝対話と6か国協議再開の条件として米国が突きつけているウラン濃縮活動の中断については「原子力の平和利用の権利があり、その一環として縮をしている」と従来の立場を曲げず、米国が1994年のジュネーブ合意で約束した軽水炉の供給を再開すれば、ウラン濃縮を放棄する用意があることを示唆したようだ。

 さらに北朝鮮の核放棄の可能性については米国内でも悲観論が支配的だが、金第一次官は「朝鮮半島の非核化は金日成主席の遺訓である」と、核放棄の意思を明確に伝えたそうだ。

 日韓のメディアではボズワース特別代表は金第一次官に対して@濃縮ウランの活動停止A国際原子力機関(IAEA)要員の復帰と監視の再開B核実験とミサイル発射の中断C国連安保理決議の遵守D休戦協定の遵守を北朝鮮が担保し、具体的な行動でもってその誠意を示すことを北朝鮮に迫ったと伝えられていたが、北朝鮮の要求事項については食糧支援と関係改善、平和協定の締結を迫ったことだけしか伝えてなかった。

 首脳会談を打診されたボズワース特別代表は2009年9月30日、あるインタビューで「オバマ大統領が金正日国防委員長と会談すれば、北朝鮮の核問題進展の重大なシグナルとなるだろう」と、米朝首脳会談まで視野に入れた発言をしたことがあった。

 肝心のオバマ大統領はかつて大統領に当選する前、米朝首脳会談について「大統領に当選すれば、首脳間の対話にも積極的に、かつ無条件応じる」と、核問題の早期解決のために金正日総書記と会談する用意があることを何度も鮮明にしていた。

 ヒラリー国務長官も議会の長官批准聴聞会の場で「平壌などを訪問して、北朝鮮の外相と会談する用意があるか」との質問には「大統領と同じで米国の国益になるならば私が選択する次期と場所でいかなる外国指導者とも会う用意がある」と語ったことがある。